女はスピリチュアル、男は企業小説好き

「小説に関しては、男性と女性ではっきりと趣味が分かれます。男性はやはり企業小説に感情移入しやすいようで、『銀翼のイカロス』『ルーズヴェルト・ゲーム』など池井戸潤さんの作品を好みます。百田尚樹さんの『海賊とよばれた男』も、出光の創業者がモデルです」

いっぽう女性は『Nのために』(湊かなえ)や『マスカレード・イブ』(東野圭吾)など、より一般受けする作品を好むという。その視点で見ると『永遠の0』(百田尚樹)は少し意外だが、安本さんは「デザインが関係しているかもしれない」と分析する。

「映画化の際に主演俳優の写真がカバーに使われて、ぐっと売り上げが伸びるのは男女ともによくあるケース。この場合、主演男優の写真が好調の理由かもしれません。

ビジネス書に関しても、男性はモノクロに近いシンプルなデザインを好み、女性は明るくかわいいデザインを選ぶ傾向にあります。ランキングにはありませんが、ベストセラー『道をひらく』(松下幸之助)のカバーを花柄にした途端、女性に売れたこともありました。本の世界にも“ジャケ買い”はあるのです」

小説以外の内容を見ていくと、ビジネスの最前線で戦う40代男性は非常に現実的だ。自己啓発書の中でも、すぐに実践できそうな「仕事論」が売れている。それに対して女性に人気なのは、「ライフスタイル」に言及したエッセイ寄りの自己啓発書だ。また、特に40代以降の女性は生来の占い好きが強まるようで、少しスピリチュアルな要素のある本もよく売れる。健康を気遣う本が上位にランクインするのも、40代以降の女性の特徴だという。女性が長生きする理由が、ベストセラーからも見えてくるようではないか。

(早川智哉= 撮影)
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