12年、垂直離着陸輸送機オスプレイを普天間基地に配備する問題が起きたときも、沖縄の反発は大きかった。しかし、結局は普天間基地にオスプレイは配備された。スピードは従来の輸送ヘリの2倍、航続距離は5倍のオスプレイは今や引く手あまたで米軍全軍に配備され、自衛隊も購入を決めたほどだ。オスプレイなら尖閣諸島まで簡単に行って帰ってこられる。つまり尖閣問題がこじれるほど普天間基地に配備されたオスプレイが抑止力になる(と勝手に勘違いする)のだ。小泉純一郎元首相の頃に合意された日米ガイドラインでは、日本周辺の島嶼部分は日本の担当となっているので、海兵隊に期待することはできない(ハズな)のである。一方、アメリカは尖閣が日米安保条約の対象となっている、とも言っている。対象ではあるが、担当は「おまえだ!」ということらしい。最近の集団的自衛権の解釈では、米軍の指揮のもとに日本も世界中に出かける、ということらしいので、今やこうした議論はあまり重要ではないのかもしれない。
辺野古移設問題にしても行き着く先は同じだ。政府と沖縄の溝がどれだけ深まっても翁長知事は、あるいは他の知事に代わったところで、最終的には辺野古移設を承認する。
膨れ上がる中国の脅威に真っ先に晒されるのは尖閣であり、沖縄だ。その抑止力になっているのが米軍基地であり、特に攻撃能力の高い海兵隊の存在である。仮に尖閣を奪われた場合、今の自衛隊ではとても奪い返せない。それができるのは上陸作戦が得意な米海兵隊。その拠点が普天間基地、という見立てなのだ。これがどのくらい信憑性がある筋書きなのか、あるいは軍事に疎い人間の錯覚なのか、明確には説明されていない。
実は06年の在日米軍の再編をめぐる日米合意で、普天間基地の辺野古移設を条件に、海兵隊の一部(沖縄駐留海兵隊約1万3000人のうち、8000人とその家族9000人)を14年までにグアムに移転することが決まっていた。しかし尖閣問題の緊迫化もあって、海兵隊の重要性を再認識した日本側が残留を望んだために、グアム移転が遅れた、と言われている。一方、前述のように同じ頃に締結された日米ガイドラインによると「島嶼部分」は日本の担当、となっている。尖閣が攻撃された場合に米軍に頼ることはできないはずであり、尖閣が占領されたとしても海兵隊が出撃して取り返してくれる、という筋書きにはなっていない。だから辺野古に普天間の代替基地をつくり海兵隊に残ってもらいたい、というのは誰の希望なのか、が明らかではない。米軍は海兵隊をグアムまで後退させる、という独自の展開を当初から想定していたわけで、辺野古に移転して一部を沖縄に残留させる、というのは(沖縄県の要望でないのなら)日本政府の意味不明の筋書きだ。
翁長知事や名護市の稲嶺進市長は辺野古移設を否定しているが、当の辺野古では受け入れ容認派が多い。漁業者とも補償金で手打ちが済み、沖縄防衛局は名護漁業協同組合と総額36億円の漁業補償契約を結んだと報じられている。