衆院選が公示された。現在、憲法改正に前向きな勢力が、改憲の発議に必要な3分の2の議席を上回る勢いだと報じられている。安倍晋三首相は今年5月、憲法9条への自衛隊明記を柱とする「加憲」の考えを示した。これに対し、篠田英朗・東京外国語大学教授は「憲法に『自衛隊』という3文字を書き加える必要はない」としつつ、「改憲そのものには賛成だ」という。その理由とは――。
▼日本国憲法第9条
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
「ならず者国家日本」の更生計画としての憲法9条
今年の5月3日、安倍晋三首相は、憲法学者の間に有力な自衛隊違憲論があることを参照して、自衛隊の合憲性を明記する9条3項を創設したいと提案。10月2日に発表された衆議院議員総選挙における自民党の公約にも、憲法に自衛隊を明記する改憲を目指すことを盛り込んだ。これに対して憲法学者の方々は、自衛隊の合憲性は政府見解になっているので、改憲は必要ない、という論陣をはっている。
私自身は、3項追加で、憲法が目指している理念がより明晰(めいせき)になるのであれば、それは良いことだと思っている。9条について言えば、国際法にしたがって解釈運用するのが、憲法の理念にそったやり方だ。憲法に国際法が優越するということではない。そうではなく、もともと日本国憲法は、国際法秩序と調和した社会を作り出すために制定された、ということだ。
現在の憲法9条は、かつて国際法を蹂躙した「ならず者国家」であった日本を、現代国際法を遵守する国に作り替えるための規定である。したがって9条の内容は、国連憲章2条4項で定められている武力行使の一般的禁止を中核とする現代国際法を遵守さえしていれば、それで十分に守られる。現行の9条でも、その内容を一言で要約すれば、「国際法の遵守」に尽きる。
したがって憲法学者の方々が一斉に「篠田の理解で良い」と言ってくれれば、私も改憲不要論に同調してもいい。もろ手を挙げて歓迎したい。しかし、それは何があっても絶対に起こらない事態だ。憲法学者のプライドが許さないだろう。あるいは社会的地位・権力が許さないだろう。
だから私自身は、3項を追加する改憲の支持者である。「国際法を遵守する」という現行日本国憲法の性格が、あまりにもないがしろにされているからだ。それを明確にするための追加条項は、歓迎である。