アメリカのトランプ大統領は、しばしば「日米安全保障条約は不公平だ」と主張する。では日本はどうすればいいのか。元外務審議官の田中均氏は「アメリカ一辺倒を離れ、重層的で多角的な安保体制を考える必要がある。究極的には、日米が相互に防御義務を持つ“相互安全保障条約”にすべきだろう」という——。

※本稿は、田中均著『見えない戦争 インビジブルウォー』(中公新書ラクレ)の一部を、再編集したものです。

岩屋毅防衛相とシュナイダー在日米軍司令官
写真=時事通信フォト
懇談する岩屋毅防衛相(左)とシュナイダー在日米軍司令官=2019年6月19日

常に「アメリカ追随」をしてきた最大の理由

トランプ的アメリカと日本はどのように付き合っていけばいいのか。トランプ大統領が日本との関係で提起してきた課題は決して一過性のものではなく、ポスト・トランプの時代においてもアメリカの指導力が低下していく限り、引き続き課題として残るだろう。

トランプ大統領が事あるごとに提起しているのは、日米安全保障条約が不公平だということだ。「アメリカには日本防衛の義務があるのに、日本にはアメリカ防衛の義務がないというのはおかしいではないか」と。じつはこの点が戦後の日米関係の根幹にあり、日本が常にアメリカに追随していくように見えた最大の理由だった。

日本国憲法の下、日本は専守防衛に徹し、集団的自衛権の行使は認められないと解釈されてきたが、周辺にロシア、中国という核大国や、北朝鮮という核開発を進める国交のない国が存在する以上、核を持つアメリカの安全保障の傘で護ってもらう以外の方法はないではないか。吉田茂総理の「軽武装、経済優先」の方針は今日まで変わらない。