他国からの攻撃に日本はどう備えるべきか。元大阪市長の橋下徹さんは「専守防衛の範囲で集団的自衛権を行使するという政府の説明では、先制攻撃となりかねない。グループ専守防衛という考え方であればこの問題は解決できる」という。憲法学者の木村草太さんとの対談をまとめた『対話からはじまる憲法』(河出文庫)より、一部を紹介しよう――。
「専守防衛は守りたい」という国民は多いが…
【木村】「専守防衛」という概念がありますよね。平成17年の防衛白書によれば、「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう」とあります。
各新聞がやっている世論調査の大まかな傾向を見ると、「専守防衛を変える」は反対多数ですが、「集団的自衛権限定容認」は拮抗~賛成多数なんです。
【橋下】賛成多数なの?
【木村】そうなんです。「攻められない限りは攻めない」という専守防衛は守りたいけれども、攻められなくても集団的自衛権の行使はしてよいと考えている。相互に矛盾するはずの専守防衛と集団的自衛権とが、世論調査では同居しています。これは世論の戸惑いを反映しているのだろうと思いました。もちろん、新しい政府解釈が認めた集団的自衛権の範囲は、アメリカが日本のために戦ってくれている場合に限定されている、と国民が理解している可能性はありますが。
集団的自衛権をお守りみたいに考えている
【橋下】ウクライナ侵攻のこともあって、国民が集団的自衛権というものについて自衛権の具体的な行使の場面を想定しているのではなく、やっぱりNATOのようなお守りみたいに考えているので、専守防衛概念との論理的整合性までを詰めていないんだと思う。専守防衛と集団的自衛権の論理的関係性なんて、法律家の中でもきちんと整理できている人は少ないからね。
他国に攻められないようにするためには、グループで守る、守られるの関係が必要だと。グループ内の他国が攻められた場合にこちらも協力するからこそ、自分も守ってもらえるのだと。
【木村】「他国も含めた専守防衛」という概念になってきていると。自他境界が曖昧になってきている。