図を拡大
効果のあるリフレクションとは

リフレクションには3段階あります。レベル1が出来事についてのリフレクションで、何が起きたのかを虚心に振り返る段階です。レベル2は他者や環境について振り返ること。レベル3が自己についての振り返りです。

われわれが過去を振り返る場合、大抵はレベル1と2に留まっています。原発事故もそうで、東電や政府の責任を問うて終わりになってしまう。しかし実はレベル3までいかないと成果は得られません。そこまできてようやく「原発は安全」「車に乗っていれば大丈夫」など、知らず知らずに前提としていた価値観(メンタルモデル)の存在に気づくのです。そこから、「原発は安全ではないから、どう制御すべきか」などと考えられるようになり、次の行動に結びつけることができる。

リフレクション力を自分のものにするには、よかったこと、悪かったこと含め、過去をとにかく振り返ってみてください。重要なのは、何事も取り掛かる前に“意図”を持つことです。意図どおりの結果になったかどうかを振り返り、それに対する答えがYESでもNOでも、なぜそうなったのかを考えるのです。

次に、何を変えればいいか、逆に何を変えずにおくべきかという仮説を立てる。これが次の行動における意図となります。その仮説をもって、新たな行動に向かう。これは自分の行動に関する「仮説→検証」のPDCAサイクルを回し続けることにほかなりません。

いつも自分を振り返っていたら落ち込むだけでは、という人がいるかもしれません。ご心配なく。よりよい未来をつくるために過去を振り返るのがリフレクションであり、過去の自分を責めるものではないからです。

GEのCEO、ジェフリー・イメルトもリフレクションを欠かさないそうです。08年、ハーバードビジネススクールの100周年祝いの会があり、彼がゲストとして来ていました。CEOになった2001年以降、9・11、リーマンショックなどが起きたことを受け、「こんなときにトップになってどんな気持ちですか」という質問に、こう答えていました。

「僕だってわからないことだらけで毎日不安だけれど、社員の前で『わからない』とは言えない。だから決断して行動する。それが間違っていたら軌道修正する。この繰り返しだ。そのために必須なのが毎晩のリフレクションさ。朝になったら自信満々の自分になっていて、また元気に頑張れるんだ」と。

熊平 美香 (くまひら・みか)
ハーバード大学大学院修了(MBA)。
熊平製作所、藤田商店等を経て、一般財団法人クマヒラセキュリティ財団代表理事。

(構成=荻野進介 撮影=向井 渉)
関連記事
「社内起業力」で会社の“孝行息子”になる
世界から見た日本のビジネスマンのいい点、ダメな点
成長に限界なし「大人の学び」のススメ
「学習する組織」をつくる質問の技術
困難に勝つ力がつく「レジリエンス・トレーニング」