上司にとって、部下に質問することは日常的業務の一部である。漫然と質問するか、意識的にするかでは、得られる結果は大きく異なる。望みどおりの結果を得るための質問のテクニックとは。
質問をすることは、単純な行為のようだが、やり方によってはびっくりするほど巧みで効果的なマネジメント戦略になる。他の戦略と同様、質問の仕方にもテクニックというものがある。
部下に質問することはなぜ必要か
「純粋に尋ねること、つまり相手の考えや疑問を引き出すために質問することは、学習の基本である。質問することで、マネジャーは部下から学ぶだけでなく、部下の思考(内省)を刺激して彼らの学習を促すことにもなる」
こう語るのは、組織学習とヒューマン・パフォーマンスを専門とする、ミシガン州アン・アーバーのコンサルタント、スティーヴン・J・ギルである。質問は、「部下が正しい答えを出せるかどうかを試すものではない。今後のパフォーマンスの向上のために、彼らが自分の行動やチームの行動について、より深く考える手助けをするものだ」。
権力のある人にとって、
質問することが必要な理由はほかにもある
「権力の大きな罠のひとつは、トップにいる人間は耳触りのよい言葉しか聞かされない、ということだ。自分は気さくで話しやすい人間だからその心配はないと、本人がいくら思っていても、そんなことは何の役にも立たない。誰だって悪いニュースは伝えたくないものだ」と、ジョンズ・ホプキンズ大学の戦略論の教授兼理事、エリオット・A・コーエンは言う。「それに加えて、当然、プレッシャーや責任感や虚勢も作用するため、リーダーは大切な現実感覚をなくしてしまう。リンカーンのような偉大な指導者と並の指導者を分かつものは、その現実感覚なのだ」。
コーエンは近著『Supreme Command』(Free Press)で、リンカーンをはじめとする戦時の文民リーダーの指導者ぶりを紹介している。