トヨタが考える高級感を表現
車内の快適性について、もう少し述べておく。アルファード/ヴェルファイアは3列シートレイアウトだが、快適性が高いのは断然、たっぷりとしたサイズのキャプテンシートが置かれる2列目。運転席&助手席もサイズは十分に大きく、デザイン面もショルダー部の張り出しが強い、見るからに高級そうなシートなのだが、長時間ドライブにおける快適性はそれほど優れているわけではない。それに対して2列目シートは、2時間程度の連続着座ではストレスを感じようもないほどに丁寧に作られている。5ナンバーサイズのミニバンでは手狭にならざるを得ない3列目シートも、十分にメインシートとして使えるだけのスペースとクオリティを持っていたが、それでもやはり2列目シートに座ってこその車だと言える。
押しの効いたエクステリア、より豪華さを増したインテリア、派手なイルミネーションの演出、そして完全ではないが重厚無比な乗り心地と、新型アルファード/ヴェルファイアは、速度の遅い日本では高級車として申し分ないレベルに仕上がっていることが確認できた。クルマの乗り味について本物を知っており、本物を求めているカスタマーにとっては最初から購入リストに入らないであろうが、マジョリティにとってはとても魅力的に感じられるであろうことは間違いない。
トヨタは初代、2代目とアルファード/ヴェルファイアを作るなかで、この種のクルマの作り方についてコツをつかんできた。その自信のなせるワザか、3代目はミニバン高級車として、これでもかというくらいトヨタの考える高級感の表現を、本当に自由闊達に盛り込んでいる。一見、けれん味たっぷりのキャラクターは、トヨタ流の正統そのものなのだ。
レクサスがいまだ「プレミアムセグメントのお客様はどのようなものがお好きでしょうか」と顔色を伺いながら作る領域から脱することができていないのとは対照的なこの迷いのなさは、国産メーカーの作るクルマとしては異色ですらある。トヨタはアルファード/ヴェルファイアづくりを通じて、自分の信じる良さをもっと思い切って表現することをクルマづくり全体に拡大させる試みをしてもいいと思う。本当に明確な世界観を表現できているクルマは、仮に万人に受けずとも、ファンの熱烈な支持を集める力を持ち得るのだから。