成功の条件はプランではなく誰がやるか
といっても、2人の出会いは偶然ではなかった。小林を紹介したのはライフネット生命の岩瀬である。
「聡明で、チャーミングで華があって、ブルドーザーのような突破力がある」
大学で開発経済を学び、最近までユニセフの仕事をしていたというバックグラウンドを含めて、小林こそ学校設立の責任者にふさわしいと谷家に説いたのだ。
その岩瀬自身、谷家に見出された逸材である。谷家は、ハーバード大学経営大学院に留学中の岩瀬がブログにつづっていた文章を読んで興味を持ち、わざわざボストンまで足を運んで「ベンチャーをやらないか」と口説き落とした。そのうえで、生保業界の大物である出口と引き合わせたというのが、ライフネット生命の知られざる創業ストーリーだ。
「結局、事業の成功は『誰がやるか』にかかっています。その次に『どの場所に身を置くか』ということ。これまで100社近い企業に投資しましたが、ビジネスモデルにかけたケースはすべて失敗しました。ISAKは、りんちゃんがやるからうまくいくし、ライフネットは出口さん、岩瀬君だからうまくいくんです」
これが谷家の持論である。
誰がやるか。それが定まった以上は、短期的に業績が悪化しても一喜一憂する必要はない。ライフネットが離陸に苦しんだとき、出口ら経営陣に何も伝えなかったのもそのためだと考えれば得心がいく。
「喧嘩には、その人なりのやり方があると思うんです。正解はなくて、その人のやり方があるだけ。出口さんや岩瀬君は本当に優秀な人たちです。いろんな話はもう(他の株主から)十分に聞いていたはずで、その中から、どれが一番自分のやり方にふさわしいかを決めればいい」
谷家の思想は明快だ。
「最も成功する人は、自分の個性を120%表現する人です。逆にいうと、それができないかぎり、本当の意味ではいい企業もいい学校もつくれない。だから僕は、それをやってほしいと思っています。ありのままの自分を見つめ、自分を思い切り表現するということは、本人にとって幸せだし、方向性が合っていれば社会にとっても一番いい」