谷家によれば、それはNPOでも同じである。

アフガニスタン難民の弁護を担当するうち、実効性の高い人権団体が必要だと痛感した弁護士の土井香苗が設立のために奔走した世界的人権団体HRWの東京事務所。谷家は、この団体へも出資や経営へのアドバイスを行っている。

「日本にもこのような団体が必要なんですと谷家さんの前でプレゼンしたら、にこにこしながらすぐに『わかりました。いいことですから手伝います』と即決してくれました」と土井が振り返る。

(右)HRW日本代表 土井香苗氏 (左)マネックス証券社長兼CEO 松本 大氏

さらに、親友であり世界的に知られた経営者でもあるマネックス証券社長兼CEOの松本大を紹介し、理事会会長とすることでHRWの知名度と信用を一気に引き上げた。

こうした支援はもちろん、個人としての活動だ。LGBT支援団体のグッド・エイジング・エールズについても、理事でドイツ証券グローバル・プライム・ファイナンス営業部長の柳沢正和から、団体の活動について聞かされたことをきっかけに手伝うようになったという。

「マイノリティーであることを社会に『認めてもらう』のではなく、むしろ多様な価値観の人間がいるからこそ社会が活性化すると考えたい。そんな私の持論をあるとき谷家さんにぶつけたんです。すると谷家さんはたいへん共感し、以来、私たちの活動にできるかぎり協力してくれるようになりました」(柳沢)

ハングリーで優秀な人は世界の宝

柳沢が持ち込んだマイノリティーの議論は、谷家をいたく刺激した。ISAKもまた、国籍や出身階層など生徒の多様性を重視しているが、多様性を「認める」のではなく、メンバーが多様だからこそ生まれる正の循環がきっとある。それを大切にしたいというのである。

「たとえば、ハングリーで優秀な人は、起業家であれ何であれ高い確率で成功します。アジアやアフリカの途上国にはそういう若者が大勢いる。彼らは『世界の宝』と言ってもいい。ISAKで彼らと接することで、他の生徒たちにもすばらしい影響があると思うんですよ」と谷家は目を輝かせる。