東大からソロモン・ブラザーズ・アジア証券に同期で入社したマネックス証券の松本大は、前述したように谷家の親友である。2人とも明るくて前向きなところはそっくりだが、周囲を巻き込みぐいぐい引っ張るタイプの松本に対して、谷家はどちらかというと和を大切にする、気配り上手なリーダーだ。

「あいつはね、優しいんですよ。僕がソロモンを3年で辞めたとき、他の新卒社員の動揺を抑えるために、ソロモン社内で『松本と接触するな』というお触れが回ったそうです。ところが谷家と平尾(俊裕・あすかアセットマネジメント社長)だけは、会社に電話してもしらんぷりして昔通りに話してくれた」

松本は愉快そうにこう話した。岩瀬が谷家からの誘いを受けたときに相談したのは開成高校の先輩である松本だが、そのとき松本は「10年で3000億円の利益を挙げた凄い投資家。そして、いい奴だ」と谷家を評したという。

ソロモンからゴールドマン・サックス証券に移った松本は、若くして頭角を現しゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。奇しくも谷家の独立と同じ99年に、マネックス証券を起業した。その直後、2人はこんな約束を交わしている。

「お互いが本当に困ったら遠慮せずにSOSを出す。受けたほうは、その内容を問わず、力や時間や金のキャパシティが及ぶかぎり無条件に相手を助けること」

心優しい投資家・谷家衛は、盟友の松本だけではなく、小林や出口、岩瀬、土井といった投資先の人々にも支えられ、マネー資本主義の急流に立ち向かっている。

(文中敬称略)

(的野弘路=撮影)
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