途上国の問題を解決するリーダーづくり
「実は学校をつくる計画があるんですよ。引き受けてくれませんか」
07年、投資の相談で面会したはずの谷家から、方向違いの打診を受けたのがそもそもの始まりだ。
直前まで勤務していたユニセフ(国連児童基金)ではフィリピンの根深い貧困問題と対峙し、谷家との面会のときも、途上国の格差問題と戦うためにマイクロファイナンス事業を立ち上げたいというビジネスプランを携えていた。
社会問題への関心は人一倍だ。しかし、彼女自身は外資系投資銀行やベンチャー経営の経験が長く、教育の世界とは縁がない。最初に聞いたときは「私には無理」と考えざるをえなかった。
ところが「アジア中のあらゆる階層から生徒を集め、社会に変革を起こすリーダーをつくりたい」という谷家の熱心な言葉を聞いているうちに気持ちが動いた。小林が言う。
「一晩、寝ながら考えました。すると、学校のイメージが浮かんできたんです。私はカナダの全寮制高校を卒業していますが、そのときの経験が甦りました。日本に全寮制の高校をつくり、そこに海外から生徒を集めて、たとえば途上国の格差問題を解決するようなリーダーを養成する。これは私の抱いていた問題意識と重なります。欧米流の徹底した個人主義ではなく、日本的な共生・共感の精神を建学の基礎にしたいという谷家さんの考えにも共感しました」
小林という「人」を得て、谷家が数年の間温めてきたISAKのプロジェクトは動き出したのだ。