苦労話を聞いて経営者は奮い立つ

経営者個人のメンターはどうか。お手本にしている経営者がいると答えたのは、成功企業31.6%であるのに対して、伸び悩み企業21.2%。お手本企業と同じく、成長企業の経営者のほうがお手本を参考にしている(図8)。

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図8:3社に1社は「お手本となる経営者」がいる 図9:「社是や社訓を定めている」のは4割 図10:3社に2社は「長期目標」を掲げている

経営者は順調に成功した人より、苦労した人をメンターに選ぶ傾向がある。苦労話を聞くことで、「偉い人にも辛い時期があったのだ」と自分を奮い立たせるきっかけにしたり、そこから苦難を乗り越えるためのアイデアを学ぶのだ。

この傾向は、成長企業の経営者も伸び悩み企業の経営者も同じだ。ただ、ダメな経営者は、自分のメンターを従業員に押しつける傾向があるように思う。私心なく朝から晩まで働くメンターの姿勢に感銘を受けたとしても、それを従業員に押しつければブラック企業になってしまう。経営者と従業員では共感のポイントが違うことを意識したほうがいい。

社是・社訓を掲げる企業は、成長企業が43.9%で、伸び悩み企業の32.4%を上回った(図9)。10年以内に実現したい夢や目標を持つ企業も、成長企業65.2%で、伸び悩み企業50.8%と、同様の傾向を示した(図10)。社是や社訓があると、企業の座標軸ができてブレにくくなる。また夢や目標があると、従業員も前向きに働きやすくなる。

事例を一つ、紹介しよう。やはり福井だが、豊ファインパックという樹脂加工企業がある。社長を含めて総勢13人の小さな企業だ。社長は円高のときフィリピンに進出する決断をして、まず小さな工場を借りた。従業員は「わが社は外国に行ってしまうのか」と不安になっていた。そこで社長は全員を社員旅行でフィリピンに連れていき、現地の工場で、「やりたい人がいるなら海外勤務してもいい」と説明。いままで自分と無縁のものだと思っていた海外進出が身近になったことで、従業員の気分が変わって社内は明るくなったそうだ。同社のように会社の夢と従業員の夢がうまく重なった企業は、従業員のモチベーションも高くなる。それが企業の成長につながることは言うまでもないだろう。