不透明なエネルギーコストが壁に
自動車内装材の分野では、通気性と弾力性に優れたダブルラッセルという素材を日本で初めて開発し、高い評価を得ました。常にサムシング・ニューの発想で世界初の商品開発に果敢に挑戦してきた結果、現在は当社オリジナルの合成皮革「クオーレ」の開発に成功、精力的に展開しています。クオーレは素材感や柔らかさ・肌触り、軽量性に優れているうえに、革に比べて約半分のコストで製造できるため、いまや革を超える新素材として高く評価されています。
ただ残念なことに、日本はエネルギーコストが非常に高く、製造業には大きな負担となっています。当社も品質や機能性に優れた合成皮革を開発したものの、国内での生産では国際競争力を高めることが難いと判断し、中国とメキシコに製造拠点を構え、アメリカをはじめ各拠点へ輸出を行っています。最近はエネルギーコストが若干安くなったとはいえ、今後の日本のエネルギー政策が不透明であることに変わりはありません。一部では製造業の国内回帰の動きが指摘されているようですが、将来のエネルギー供給がどうなるかわからない現状では、国内への投資はリスクが大きすぎると言わざるを得ません。
こうして主力事業に成長した自動車内装材が、セーレンを21世紀型企業へと大きく転換させる力となったのは間違いありません。次回は、「非衣料・非繊維化」と同時に進めてきた「一貫生産体制の実現」に不可欠だった、カネボウ繊維部門の買収についてお話ししたいと思います。
セーレン会長兼最高経営責任者
1940年、福井県生まれ。62年明治大学経営学部卒、同年福井精練加工(現セーレン)入社。87年社長就任。2003年より最高執行責任者(COO)兼務。05年より最高経営責任者(CEO)兼務。05年に買収したカネボウの繊維部門をわずか2年で黒字化させる。14年より現職。セーレン http://www.seiren.com/