80年代から情報社会を予測

セーレンは今年、ビジネスモデルの転換を重点戦略の1つに掲げています。素材の製造販売を中心とするBtoB事業から、消費者の近くで製品化を手掛けるBtoC事業への新たな挑戦です。アパレルのパーソナルオーダーと化粧品を軸に、製品化とダイレクト化を進めていきます。

セーレンがBtoCに大きく舵を切ったのには理由があります。21世紀という情報社会を生き残るには、「パーソナル化」がキーワードになると考えたからです。じつは、BtoCに至るビジネスモデル転換のビジョンを描いたのは、私が社長に就任した直後の1980年代後半でした。当時、我々が21世紀に向けてどのような時代認識を持っていたか、というところからお話したいと思います。

人類の発展は、食べ物を栽培し生産することを発明した「農業革命」に始まり、機械による大量生産を可能にした18世紀の「産業革命」を経て、飛躍的な進歩を遂げました。ヨーロッパで始まった産業革命は、アメリカ、日本、東南アジアに広がり、今まさにアフリカにも及ぼうとしています。そして迎えたのが、「情報革命」の時代。セーレンも長らく産業革命の延長線上でやってきましたが、インターネットが登場し、世の中が急激に変わろうとするなか、ITを企業活動にどれだけ取り入れることができるかが生き残りのカギになると考えたのです。

では、いま私たちが生きる情報社会とは、どのような社会なのでしょうか。これについても我々は早くから予測していました。ITの登場により、従来の大量生産からパーソナル化へ、オン・スケジュールからオン・デマンドへ、サプライヤー・イニシアティブからユーザー・イニシアティブへ、リアルからバーチャルへと変化していくに違いない。こうした環境の変化を先取りし、80年代後半からITの導入のほか、製品化にも対応すべく企画から製造・販売までの一貫生産体制の構築など、21世紀型企業にふさわしいモノづくりに取り組んできました。