駅弁を食べる姿の「佇まい」
本のリサイクル・ショップ(当時は新古書店などと呼ばれた)、「ブックオフ」が話題になっていた2000年に、自らも古書店主の小田光雄は『ブックオフと出版業界』(ぱる出版)という本を書いたが、そこで行動する際の「佇まい」について、こんなふうに書いている。
「昔でしたら、駅弁を買うとフタの裏側についている御飯を食べることからはじめるというのが当り前で、駅弁を食べる姿にもそれなりの佇まいがありました。それがひとつの食の文化ではなかったでしょうか。……食べ物が捨ててある風景も日常茶飯事のものとなりました。食事なら捨てられませんが、エサだから捨てるんではないでしょうか。……読書が精神の営みではなく、単なる消費的行為になった。本が精神にかかわるものなら捨てられないが、消費財や単なる情報だったら簡単に捨てることができる」
佇まいという言葉は、すでに死語に近いけれど、そこにはアナログ時代のゆったりとした時の流れが感じられる。
東京駅近くに丸善・丸の内本店がオープンした2004年、4階ギャラリーで「音の遺産と蓄音機展」という催しをやっていた。
蓄音機のコレクションとして有名な「林コレクション」の主催で、林静雄代表取締役がこれまでに集めた十数台の蓄音機が並んでいた。蓄音機の発明者、エジソンから、名機と言われるEMG社製の蓄音機まで、蓄音機発展の歴史や珍しい資料、写真も展示されていた。