自分しか知らない情報の集め方

情報には3通りある。1つ目は、グーグルなどのサイトや、商用データベースで検索すれば誰もが入手できる情報だ。2つ目は、その情報に自分の経験から得た話や考察を少し加えたもの。3つ目は、直接人と話し現場で見聞きした、自分しか知らない情報である。私が特に重視するのは、3つ目の、自分だけが知る情報だ。これらを集めるために、自分でユニークだと思い、人にも勧めているのが「アナログにこだわる」ことだ。

<strong>早稲田大学商学学術院教授 内田和成</strong><br>1974年、東京大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、85年ボストンコンサルティンググループ入社。2000年から04年まで日本代表(現在はシニア・ヴァイス・プレジデント)。著書に『仮説思考』(東洋経済新報社)など。
早稲田大学商学学術院教授 内田和成
1974年、東京大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、85年ボストンコンサルティンググループ入社。2000年から04年まで日本代表(現在はシニア・ヴァイス・プレジデント)。著書に『仮説思考』(東洋経済新報社)など。

インターネットでの情報検索は便利ではあるが、短時間で基本的な情報を集める程度にとどめるようにしている。ネット上の情報源やその検索方法は、ビジネスパーソンなら最低限知っておくべきだが、誰もが集められる情報だけでは、創造的な発想や思考を生むのは難しい。

コンサルタントの仕事を始めた頃は、手当たり次第に情報を集め、KJ法(カードや付箋を使って情報を整理する方法)や京大式カード整理法(B6判のカードを使った整理法)など、さまざまな情報整理術を試した。スキャナで読み取り、データベース化を試みたこともある。

だが、それでは情報の「収集」と「整理」で手一杯になってしまい、肝心な情報の活用がほとんどできない。それならば、完全に「活用」に重点を置き、一番楽で手抜きできる方法でやろうと考えた。それがアナログで情報をためることである。

やり方は簡単だ。A4判が入るビニールの袋をいくつか用意し、それぞれの袋に、気になっているテーマ名を書いたシールを貼る。そこに新聞や雑誌の切り抜きを入れていく。例えば、何かを小さく分けることで成立するビジネスのヒントには「小口化」というテーマをつける。最近切り抜いたものに、「セカンドライフ」の記事がある。これはもともと作っていた「バーチャルのリアル化」という名前の袋に入れてある。これらは決して何かのルールに則ってやっているわけではない。その時々に興味を持ったものを投げ込んでおき、後は放置する。そしてあるときに見直し、これは使えると思ったものはバインダーに綴じ、書棚に並べる。ワインと同じように放置して熟成を待つのだ。このときの取捨選択の基準は、仕事に役立つか否かではなく、興味を掻き立てられる対象であるかどうかだ。