なぜ現代の親は育児をスマホに頼ってしまうのか。『ルポ スマホ育児が子どもを壊す』(新潮社)で、スマホに育てられた子どもたちや親の現状を取材したノンフィクションライターの石井光太さんは「現代の親はスマホがある環境で子育てをする初めての世代だ。お手本も正解もない中で苦しみながら子育てをしている」という――。

スマホと共に育った子どもはどう成長していくのか

2022年に子どもの言語能力や国語力を浮き彫りにした『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(文藝春秋)を刊行しました。その後、全国の学校など教育機関で講演をしたところ、スマホを渡されて育った子どもたちが、物事を言葉で感じ、考え、表現する能力が弱くなっている、ということをいろんな先生が指摘されていました。それが特にコロナ禍以降に顕著になっている、と。

その例として示されたのが、公園へ行っても遊び方がわからない子だったり、教室で漠然とした「あつ」を感じて来られなくなる子だったりしました。

具体的にはどういうことなのだろう、と現場の先生方に聞いていたら、いつの間にか、というよりもあっという間に、その話が蓄積していきました。

実際に取材をしていても、普通に暮らしていても、環境の変化は大いに感じますよね。自分自身もスマホに向かう時間が増えているからです。となると、生まれたときから当たり前に使いこなす子どもたちはどう成長していくのだろう――。成人してからはじめて携帯電話を持った世代として、そこに関心を抱いたんです。

ベビーカーの赤ちゃんがスマホを持っている時代

日本では、2歳児のタブレットを含めたインターネット利用率は58.8%に達しています。街を歩いていても、ベビーカーに乗った赤ちゃんが持っていたり、小さな幼稚園児が夢中でiPadでアニメ動画を見ていたり、利用率の数字に納得のいく光景ばかりです。

スマートフォンを見ながら哺乳瓶から飲む幼児
写真=iStock.com/Olha Romaniuk
※写真はイメージです

ある保育園ではお昼寝の時間にスマホ用の「寝かしつけアプリ」を利用しています。家庭で当たり前にそれで寝ている子どもは、保育士の歌声ではダメで、アプリの声でないとむしろ眠れないのだとか。

もちろん、ごく一部の例でしょうが、チラホラと起きている現象は、数年で「当たり前」になる場合があります。それをいまのうちに拾って伝えたいと思いました。