3.簡単に裏切る人間はどうやったら見抜けるか
冒頭でも述べたようにマキアヴェリは人間の本性は「善より悪だ」と考えます。最初から他人を信じなければ、裏切られることもないし、落胆する必要もありません。
例えば、あなたが独立を考えているとします。「全力でサポートします」と言ってくれる取引先や部下も多い。けれど、実際に独立してみたら誰もついてこなかったなどは、よくある話。ここではじめて「信じた自分がバカだった」と思い知らされるのです。
それというのも人間は死ぬ危険がほとんどない場合にははせ参じ、支持を約束し、君主のために死ぬ覚悟があると述べるが、君主が市民達を必要とする時節が到来すると少数の人間しか彼のもとには見いだされない
人は平時に自分を慕ってくれる人や、すり寄ってくる人を重用し、厳しい意見をぶつける人物を遠ざけがちです。が、いざ自分が逆境に陥ったときに、そういった人々が離れていくと、「裏切られた」と絶望する。
自分の味方は誰かを平時に判断するのは不可能に近い。心理学者でもない限り、他人の心を確実に見抜くことなどできません。その点、足を引っ張られ左遷されるといった状況に陥るのは、味方を見極めるという意味で実はいいことなのです。本当に信用できるのは誰かよくわかる。逆境にある自分に対し、いつもと変わらず連絡を絶やさずくれるような人は、間違いなく信用に値します。
何度も逆境に立たされた人、失敗を繰り返した人ほど、成功する率が高まるという米国のデータがあります。逆境に立たされたことのない人は、相手を判断する機会がありません。一見、順風満帆な仕事人生に思えても、定年退職した途端、会社関係からの年賀状がゼロになってはじめて、「皆、地位や肩書と付き合っていたのか」と知る。そんな悲しい結末を迎えぬよう、平時から人を見抜く状況をつくることが大切です。
※言葉の出典は『使えるマキャベリ』(内藤誼人著)
心理学者
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。アンギルド代表取締役社長。立正大学客員教授。実践ビジネス心理学を中心に、企業へのコンサルティングなども行う。著書に『使えるマキャベリ』など。