2.社内に敵をつくらない秘策やコツはあるのか

さらに上のポジションをめざすなら、社内の「悪評」はないほどいい。当たり前のことですが、敵は少ないに越したことはありませんし、味方は多ければ多いほど心強いでしょう。

敵をつくらないコツは、「相手の嫌がることをしない」ということに尽きます。もし、周囲に敵が多いと感じるならば、改めて自分が周囲にどう振る舞っているか見つめ直すことも大切です。

君主は憎まれたり蔑まれたりするような成り行きを避ける方法を考えなければならない。
憎悪や侮蔑を首尾よく免れれば、もうそれだけで君位の大役を果たしたに等しく、ほかの非難を浴びたとしても危険はない

ときどき「部下のため」と称して、何でもかんでも「ここがダメ、あれがダメ」と、バカ正直に指摘する人がいます。そういう人は、感謝されるどころか結局、恨まれる。僕に言わせたら、バカ正直ではなく、本当のバカ。そういうときは心の中で「自分以外はみなダメ」と思っておけばいいだけで、あえて口にする必要はありません。明らかに相手が直視したくない現実であれば、いちいち無理に見せつける必要はない。人間同士である以上、「考え方が合う、合わない」「好き嫌い」があるのは仕方ありません。

人間には「嫌い」だけど許せることと、許せないことがあります。部下にすれば、仕事に厳しすぎたり、短期的に自分たちに不利益な決断を下す「鬼上司」は嫌いかもしれない。けれど、その厳しさそのものが絶対に許せないかといえば、そんなことはないはず。むしろ許せないのは、前述のように結果を考えずに相手をけなすばかりの上司や、逆に、一部の人にだけやさしい「えこひいき上司」。彼らは部下に嫌われるだけでなく、恨みも買うでしょう。

自らの地位の存亡に関わらない悪評でも可能な限りそれを避けうるほどに賢明である必要がある。もっとも(中略)それが不可能であれば、あまり気にすることなくそのままにしておいてよい

「悪評」と「恨み」は違います。マキアヴェリは、厳しい政策はいいけれど、家臣の嫁を寝取るようなことは、多くの恨みを買うからやめよ、と忠告しています。「憎悪や侮蔑を首尾よく免れれば、ほかの非難を浴びたとしても危険はない」。つまり、非難されても、そこに恨みや憎しみがなければ、問題ないということです。恨まれないためにも、相手の心(感情)の琴線に触れるような行為だけは、ビジネスでも絶対に避けなければなりません。そこさえ気を付けていれば、反対の多い決断でも、長期的に、多くの人に感謝される結果をもたらす可能性は高いはずです。