単に部屋の中で思索にふけるのではなく、外に出て自ら行動を起こすことで人間関係を深く洞察してきた哲人の言葉から真に豊かに生きる術を『超訳 ニーチェの言葉』の著者・白取春彦氏が解き明かす。

3.どうして自分はダメだと決め付けてしまうのか

人は悪がなくなればいいのにという。そして、何々が悪だと決めつける。けれども、そうだろうか。
悪は必ず存在する。なぜならば、わたしたちに自由があるからだ。この自由があるから、同時に悪は存在しえるのだ。
自由がないのならば、そこはたんに平坦な世界であり、善も悪も存在しえないことになる。
しかし今、悪があるからといって、悪いものがあるわけではない。
もし、悪があるというのなら、それはわたしたちの意志なのだ。私たちの意志こそ悪でありえるのだ
ヤスパース
ヤスパースはハイデルベルク大学で心理学などを講義して哲学教授に転じるが、ナチスによって教壇を追われてしまう。(AP/AFLO=写真)

ヤスパースは、ナチス・ドイツを経験したドイツ人の哲学者です。彼はドイツ人ですが、奥さんはユダヤ系だった。

だから当然、厳しい締め付けを食らいました。仕事も失ったし、収容所に送られる寸前まで追い込まれました。奥さんと別れれば、無事に済む。でも別れずに、2人でナチスに抵抗した。とても勇気のある哲学者だと思います。

そのヤスパースの『哲学』という本は非常に難解です。しかし、哲学的な考え方を深めることによって、常識とは異なる物の考え方ができるという哲学の醍醐味を知ることができる本であり、引用した箇所は、まさにそんな一文です。