曽山 おそらくそうなるでしょう。人材の定着が悪いところの上司は、辞めないよう説得するための面談に、上司自らが奔走するようになってしまいます。こういう会社は本当に落ち着かないのです。
サイバーエージェントも実はそういう時期がありました。ネガティブな面談は根本的な解決にはならないし、人事だってつらいですよ。採用しては辞め、採用しては辞めが続くわけですから。
小室 結局、その向きになってしまうと、すべてが流出していきますよね。人も業務のノウハウも。「やりがいのない会社」という噂ばかりどんどん大きくなっていく。
曽山 そうですね。これからは勤務時間を平準化したり、仕事や情報を共有化したりしていく環境整備は、企業が存続していくための、かなり重要なファクターになると思います。
社内のコミュニケーションを活性化させておくとか、人事が面談機会を多くして権限委譲を促したり、メンターを生かして気持ちの「ガス抜き」をしたりすることもトータルで大事ではないでしょうか。
小室 日本社会が人口構造上、圧倒的に労働力人口が足りなくなる。そのなかで人が定着しない企業は業績も上がらないという「負のスパイラル」に入りやすいという事実を、私たちは気づくべきだと思うのです。団塊の世代が辞めたら、労働力人口が足りなくなると叫ぶばかりでは遅い。それ以前に、団塊世代が抜けた分の仕事を、誰が担うか、どうやって分担していくかを真剣に考えて、手を打たないと。
すべての圧力が中間層にかかっている構造を解消していけば、自然と人は定着しますし、業績も上がります。アイデアも活発に出てくるようになるのです。ですから今が改革のチャンスだと感じて、ぜひ「正のスパイラル」にまわり出す会社が増えることを期待したいですね。
※この対談は、プレジデント社の新刊『「3人で5人分」の仕事を無理なくまわす! 』(1月21日発売)に収録されているものです。