「プレミアム戦争に勝ったところがビール戦争に勝つ」とみずからデパート店頭に立つ小路。

そんな大出が言う通り、門間最大の武器は、販促提案の精度の高さだ。

「バイヤーさんから季節に合った売り場のテーマはないかと聞かれた際、バイヤーさんのイメージにピタリと合致した売り場の演出をご提案するのです。最初は精度が低かったのですが、何度もやりとりするうちにバイヤーさんのご要望と私のイメージが非常に近くなりまして、ご要望をいただく前にこんなものはいかがですかとご提案できるまでになりました」

“バイヤーが2人いる感じ”と言われるまでに大出の信頼を得た門間は、月例で行われていたとりせんとの商談を、年間で数値目標を握るところまで深化させることに成功する。「ダントツ取り組み」と銘打って、昨年は前年比107%、今年は105%という販売金額の目標を握った。

6月には大出と一緒に米国の視察に出かけ、その成果をすぐさま共有。精肉売り場でバーベキュー用のプレミアムな牛肉とドライPを関連づけて販売するという斬新な企画に結びつけた。

大出は、ドライPをどのように評価しているのだろうか。

「断トツブランドのスーパードライを否定しかねない商品を出すのは、最初ありえない話だと思いました。でも飲んでおいしいし、デザインもプロモーションも最高。これで売れないわけがないと思ったとき、これはスーパードライの否定じゃなくて、磨いて足した商品だと理解できた。だったら今売るのはこれしかない。これまで想像できなかったような数字を出してやろうと」

門間が「大成功でしたよね」と言えば、大出も笑顔を見せる。

「大成功だったね。この商品一品でビール全体の売り上げも利益も上げちゃったからね。感謝しています」

“プレミアム戦争”での勝ち残りを模索すると、どの社も最後はブランドの原点に回帰する。現場はそれを理解し、伝え、すべてのステークホルダー(利害関係者)を幸せにすべく日々奮闘する――そのあたりは、何もプレミアム商品に限ったことではなさそうだ。(文中敬称略)

(永井 浩、石橋素幸、山口典利、村上庄吾=撮影)
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