まずは一番耳馴染みの深い“散骨”から。これは海や川に遺骨や遺灰を撒くもので、映画などでそのシーンを見たことがある人も多いだろう。「母なる海に還る、というイメージがしやすいため人気です。とはいえ、海水浴をする人の隣で撒けば嫌がられますし、山に遺灰を撒くスタイルは、近隣住民の迷惑にもなることがあります」(井上)。実際にはクルーザーなどで沖合の海へ行き、遺灰を水溶性の袋に入れて撒くことが多いようだ。
お次は共同墓。これは友人など血縁関係がない者同士、場合によってはまったく知らない赤の他人同士を一緒の墓、あるいは納骨室に埋葬する。寺が墓地の管理をする場合は“永代供養墓”と呼ばれ、檀家になる必要がない点もポイントだ。生前に申し込むケースが多いため、“墓友”などと呼ばれるサークル活動を行い、親睦を深める場合もある。
“樹木葬”は、近年静かなブームともいわれている。これは「墓地・埋葬等に関する法律(墓埋法)」にのっとって許可を得た墓地に、墓石ではなく花木を墓標として植え、その下に穴を掘って遺骨を埋めるスタイル。なかでも大きな桜の樹の下に共同で埋葬するスタイルを“桜葬”と呼ぶ。これらは自然志向とも強い結びつきがあるため、骨壷に入れて墓石の下に納める通常のスタイルとは異なり、やがては自然に還るよう、土の中に直接遺骨を埋めることが多い。「墓の継承者は必要ありませんが、申し込み時に希望しておけば家族で同じ区画に埋葬することもできます。また、墓標が花木であっても “墓参り”的なことはできるため、遺された遺族にとって感情的にも受け入れやすい埋葬スタイルでしょう。現在私がサポートする桜葬の墓地も、350人分の埋葬地が2年程度で売れてしまうほど。ただし、墓埋法で『墓地として都道府県知事から認められた区域にしか埋葬してはいけない』と定められており、家の庭やどこかの山に行って勝手に遺骨を埋めてはいけません」(井上)。