独居老人などの身寄りのない人の葬儀費の行政負担が過去最大となっている。名古屋学院大学准教授の玉川貴子さんは「自治体や社会福祉協議会頼みのサービスではいずれ限界が来る。その時には『葬式税』の導入が議論されるかもしれない」という――。

※本稿は、玉川貴子『葬儀業』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。

「自分自身の葬儀」にいくらかけたいか

葬儀の準備・予約をする際、お布施や飲食費用以外で自分自身の葬儀でどのくらいの費用をかけたいかをあらかじめ決めておく必要があるでしょう。ただ、自分の考える葬儀費用が他人と比較してどうなのかも気になるところです。そこで、自分の葬儀にどのくらいかけたいと人々が思っているかを著者らは2017年に調査したことがありますので、その内容を少し紹介しておきたいと思います。

喪服を着て数珠を持って手を合わせる女性
写真=iStock.com/Yuuji
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調査では50代以上の男女1016人に対し、終活についてさまざまな意見などを求めました。そのなかで、「自分自身の希望する葬儀費用」について回答を求めたところ、最も多かったのは「50万円未満」、次いで、「50万~100万円程度」でした。

また、「自分の希望する葬儀の形式」について尋ねる質問に対しては、「家族や親しい身内だけで行う家族葬」が45.1%、「家族や親族の判断に任せたい」が18.7%、「直葬」が17.8%という結果になりました。

女性は直葬を希望する割合が高い

これらの回答を性別との関連性でみたところ、「家族葬」や「直葬」は、女性のほうが多く希望していました。一方、男性は、自分自身の葬儀であっても、「家族や親族の判断に任せたい」が多いという結果になりました。日本国内の平均寿命は、男性は81.05年、女性は87.09年であり(2022年の簡易生命表による)、依然として女性のほうが長生きする傾向にあります。

そうしたことを踏まえて男性は自身が妻やパートナーよりも先に亡くなると考え、葬儀に関しては遺族となる配偶者や子どもらに任せたいと思っている人が多く、女性は夫に比べて自分のほうが後に亡くなるだろうと考えて、「直葬」を選んだという背景が考えられます。

世代別で見てみると、「家族葬」希望者は70代が多いこともわかりました。ちなみにこの調査では、「生前葬」についても聞いていますが、生前葬を希望したのは、わずか5人でした。