「無縁遺骨」の行政負担が過去最多

では、同居者がいない、あるいは身寄りのない単身者が生前契約をせず、またお墓なども購入しないとどうなるのでしょうか。このことを憂慮する記事は、これまでも度々ありましたが、2023年3月19日の「日本経済新聞」にも取り上げられていました。

いわゆる「無縁遺骨」で、2021年度に行政が家族らの代わりに葬祭費を負担した例は、全国で4.8万件の過去最多となったそうです。またその記事では「葬式税」を徴収し、埋葬や葬儀費用にあてているスウェーデンのことにも触れています。世界的に身寄りのない単身者が増えるなかで、葬儀、遺体の搬送、火葬、納骨までを家族以外に依頼する制度の整備が急務となっています。

日本ではスウェーデンのような「葬式税」はありません。単身者が葬儀を行ってほしいと考えた場合、「Liss(りす)システム」のようなNPOや民間の事業者などが単身者向けサービスを提供する機関を利用することになります。ほかにも、身のまわりの死後事務委任(財産管理や葬儀手配など)を家族に代わってサポートする「おひとりさま信託」(三井住友信託銀行)や「おひとりさまライフサービス」(三菱UFJ信託銀行)を銀行で取り扱っています。

三井住友信託銀行の場合、金銭信託型と生命保険型があり、前者は最低300万円を一括で払う必要があります。後者は三井住友信託銀行の生命保険契約を活用するタイプで前者よりも比較的安い料金で信託できるものです。日本生命保険など生命保険会社でも身元保証、生活支援、任意後見から葬儀・納骨までのサービスを提供するプランを実施しています。

骨壺
写真=iStock.com/SAND555
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自治体や社会福祉協議会がサービスを展開

また、自治体や社会福祉協議会でも単身者向けのサービスを展開する動きが出てきています。神奈川県横須賀市では「エンディングプラン・サポート事業」を2015(平成27)年から開始しており、葬儀社と連携して本人に万一のことがあった場合、死亡届や葬儀、納骨などを行えるようになっています。このエンディングプラン・サポート事業を利用するには、ひとり暮らしで頼れる身内がいないことや収入などの制限があります。

ただ、終活について登録する「わたしの終活登録」事業も2018(平成30)年から始めており、市民であれば誰でも登録できるようになっています。

登録される項目は、本人の氏名、本籍、住所、生年月日、緊急連絡先、支援事業所や終活サークルなどの地域コミュニティ、かかりつけ医師やアレルギーなど、血液型、リビングウィルの保管場所・預け先、エンディングノートの保管場所・預け先、臓器提供意思、葬儀や遺品整理の生前契約先、遺言書の保管場所と、その場所を開示する対象者の指定、墓の所在地、本人の自由登録事項などです。

たとえば、本人が倒れて病院から照会・確認したくてもできない場合、横須賀市が本人に代わってこれらの情報を伝えるという内容になっています。