「安さ」より「家族に見送られたい」という希望
このことから二つの解釈が可能です。一つ目は、生計のゆとりがある人たちにとって「家族葬」は、「一般葬」より“安い葬儀”と認識しているから希望しているだけではなく、“家族や親族に見送られる葬儀”であることも重視しているのではないか、ということです。
もし、生計にゆとりがあっても安い葬儀を希望しているならば、「直葬」がよいと思うか、あるいは「葬儀をしない」と希望するでしょう。また、葬儀資金の準備をしている人としていない人の平均貯蓄額に差があるかどうかを調べたところ、葬儀資金を準備している人はそうでない人に比べて平均貯蓄額が高い結果となりました。
つまり、平均貯蓄額が高い、あるいは生計にゆとりを感じる人は葬儀の執行そのものを否定しているわけではないことがわかります。
女性が「自分の葬儀はいらない」と考える理由
もう一つの解釈は、「生計のゆとりがない」と感じる人は葬儀費用の問題だけでなく、誰かに見送られることが望めない可能性があるということです。同居者の有無別でみると、同居者がいない人は、同居者がいる人に比べて「直葬」を希望する傾向があり、同居者がいる人は「家族葬」を希望する傾向がありました。
同居者がいない人で「一般葬」を希望する人はゼロでした。つまり、同居者がいない場合、そもそも自分の葬儀を出すことについての希望を持ちにくく、同居者がいる人は、葬儀に関する希望を持つ場合、やはり「家族葬」を希望することがわかります。
これらの調査結果からわかることは、性別、生計のゆとり、同居者の有無で葬儀に対する考え方が異なること、特に女性のほうが葬儀にお金をかけたくない傾向にあるということです。男女では死亡年齢が異なるため、配偶者と死別した後、残された女性のほうがより経済的にも苦しくなりやすいと考えているのでしょう。
夫が死亡した後の女性は子どもや自分のきょうだいなどとの同居がないかぎり、ひとりになりやすいわけです。「葬儀をしないと決めている」人が女性に多いのは、頼れる人がいないこともあるのかもしれません。