「お布施」はもともと、仏の教えに出合って、自分が執着しているものを喜んで捨てる“喜捨”。日本では地域差も著しく、宗派や寺院の格式、僧侶の僧階、戒名の内容、寺との付き合い方などによって金額も異なってくる実態がある。
本来は寺院の維持管理に使われるお金であり、お寺を援助することで「功績を積む」との考え方に則する。“援助”の内容は様々で、例えば、お寺の掃除を手伝うなどの奉仕活動も「お布施」に当たり、葬儀では生前に奉仕が適わなかった分もお金で援助するといった目的を担う。
檀家制度が事実上破綻している現代では菩提寺を持たない家も多く、とかく読経や戒名をもらう対価として解釈しがちだ。深い信仰心がなくとも、いまだ葬儀全体の9割を仏式が占める現状は、宗教儀礼に求められる効果や役割の高さを裏付けており、状況的にお布施は葬儀費用の一部だと考えざるをえないだろう。
ただ、お布施を「僧侶への感謝の気持ちと寺院護持のための施し」と捉えるか、「葬儀サービスへの対価」と考えるかは各人の捉え方次第。“僧侶の出仕料”と割り切った考え方ができるなら、寺院を持たない分、総じて低費用ですむ僧侶の派遣サービス業者を利用するのも一案だ。
ただし、人材はピンキリのため、どこでどんな修行をした僧侶なのか、あらかじめ確認しておく必要がある。また、葬儀社に僧侶の手配を依頼する場合は、「在家僧侶通信講座」を受講させた自社社員が僧侶に扮するなどの悪質なケースもあるため、前もってどこの寺院の僧侶なのかを訊ねておき、当日は必ず名刺をもらうこと。昨今、火葬炉前での読経だけなら、3万円程度から手配が可能だ。