スノーデンが暴露した米国政府の個人情報収集

スマートフォンを通して従業員の行動を逐一把握するためのツールも開発されている。「仕事の見える化」を促進できると宣伝されているあるアプリケーションは、それをインストールしたスマホを従業員に持たせれば、彼らがいまどこにいるかの位置情報、どのようなメールをだれと受発信したかの履歴とその内容、添付ファイルの中身、電話の送受信と音声内容、途中で利用したウエブアクセス履歴、サイトのURLとキーワード、使用したアプリケーション履歴などが完全にログとして管理できる。従業員のプライバシーは風前の灯である。

そして、国家レベルでの個人情報収集となると、これは2013年に明らかになったアメリカNSAの大規模盗聴事件にとどめを刺すだろう。元CIA職員、エドワード・スノーデンに接触してその告発を英ガーディアン紙で報じたアメリカのジャーナリスト、グレン・グリーンウォルドは最近、そのいきさつを綴った『暴露 スノーデンが私に託したファイル』(新潮社、原題はNO PLAEC TO HIDE、世界24か国で同時刊行)を著した(スパイ小説並みのおもしろさ、いや怖さである)。それによれば、NSAはアメリカ国中の通信会社や大手IT企業の多くのサーバーに直接アクセスして、日常的に個人情報を収集していたらしい。もちろん日本人のものも含めて、電話による通話、フェイスブックのチャット、グーグルの検索履歴、ヤフーのEメールなどが令状もなく収集されていたのである。

もちろん日本語で書かれたメールの中身を彼らが日常的に読んでいることは物理的にもあり得ないが、何かの意図で調べようとすれば調べられる材料が常に用意されているわけである(こういうユビキタス監視装置の是非が『暴露』のテーマである)。