高価格帯のブランド再生が急務

ホンダは今期、国内販売を18万台積み増し、103万台を狙うという。グローバルでは50万台も多い483万台だ。が、利益額は今年と同じ。これでは増えた仕事の分、タダ働きも同然。言い換えれば、刻一刻とクルマの付加価値が下がり、利益が減少するのを台数アップで何とかごまかしているようなものだ。

ホンダがこの混迷から抜け出す方法はひとつ。顧客がより高い価値を認めてくれる、言い換えれば高く買ってもらえるクルマを作ることだけだ。今日、ホンダの国内販売を見ると、軽自動車とコンパクトカーが大半で、高価格帯のクルマは販売不振モデルのオンパレードだ。すでにユーザーには、「早い安いクルマならホンダはいい」というイメージが染み付きつつある。

同じホンダの二輪車部門はグローバルでみれば超低価格モデルが主流で四輪車以上の薄利多売体質なのだが、営業利益率は10%近い。生産も販売も新興国主体だからだ。ホンダが現在の路線を進んでいけば、四輪もいつかそういう判断をせざるを得ない時が来る可能性は高い。儲かればそれでいいという考え方もあるが、「日本にモノづくりを残す」という伊東社長の“公約”を果たすのは難しくなるだろう。

ホンダは独自のブランドイメージでクルマやバイクの付加価値を高め、優秀な人材を吸引してきた歴史を持っている。また、保有する技術資産も質量共に世界有数である。早い安いうまいではなく、ホンダがカスタマーをどう楽しませるかという哲学を明確に発信し、それを体現する製品づくりに今取り組めば、ブランド価値の再生は不可能ではないだろう。

もっとも、それにも時限はある。「今、ホンダの戦線が日米を中心に崩壊しないですんでいるのは、過去にホンダのブランドに価値を感じてくれていたカスタマーがまだ残っているからだが、彼らもすでに若くはない。そういうカスタマーがいる今ブランド再生ができなければ、あとは日本であろうとアメリカであろうと、ホンダ=安物としか見てくれない層だけが残る。そうなったらもうブランドイメージ向上などおぼつかなくなる」(ホンダ幹部)。

ホンダの経営陣や技術者は、もはや自分の体面を気にしている場合ではない――そのことがいよいよ明らかになった13年度決算であった。

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