「我慢して使った選手が活躍すると、本当にうれしい」
近鉄との日本シリーズは、ヤクルトの若手もベテランも若松を胴上げしようと、ヒーローが日替わりで現れた。
第3戦、5回を1失点に抑え、勝利投手になった入来智は、巨人を自由契約になり、テスト入団した選手だった。第4戦は苦労人の代打・副島孔太が決勝アーチをかけ、王手をかけた。第5戦は先発ホッジスからニューマン、河端龍、そして高津臣吾とつなぎ、全員野球で日本一を勝ち取った。
若松は力説している。
「選手は日本人、外国人を問わず、我慢して使った選手が活躍すると、本当にうれしい。監督の仕事はつらいが、数少ないご褒美だ」
日本一の胴上げでは、若松が1メートル66センチと小柄なため、クルリと一回転。宙返りの首謀者は、石井一久だった。
ファンが注目したのは、若松のインタビュー。リーグ優勝したときは、
「ファンの皆様、本当にあの~、あの~、おめでとうございます」
と語り、場内が大爆笑となった。
若松は自著『背番号1の打撃論』で、打ち明けている。
〈「名言」だとか「迷言」だとか、いろいろ言われたが、私の正直な気持ちだった。……私は「ありがとうございます」と言うより、「おめでとうございます」と言ったほうが、(ファンに)感謝の気持ちを表すにはふさわしいと思ったのである〉
日本シリーズを制した際は、こうだった。
「ファンの皆様、改めまして、日本一、おめでとうございます……」
975試合 496勝461敗18引き分け 勝率5割1分8厘
(文中敬称略)※毎週日曜更新。次回、王貞治監督