特に重要なのがリーダーシップです。マッキンゼーが採用したい人材とは、ひとことで言えば「将来、グローバルリーダーとして活躍できる人」であり、「リーダーシップ・ポテンシャルをもっている人」です。

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日本では多くの人が「リーダーは組織に1人か2人いればいい」と考えています。「船頭多くして船山に登る」という言葉もある。しかしここでの「船頭」とは、「自分の主張を押し通そうとする強引な人」であって、リーダーではありません。本来のリーダーは、「成果を出すこと」を自説が採用されることより優先します。だから全員にリーダーシップがあれば、船は山には登らず、海に向かうはずなのです。

しかもそれは、新入社員も含め組織の全員が持つべきものです。1人だけがリーダーというチームでは、それ以外の人はフォロワーとなり、「チームをまとめ上げるのはリーダーの仕事である」と、指示待ちになります。一方、全員がリーダーのチームでは、それぞれが個別メンバーとして成果を出すことはもちろん、「チーム全体の意見をまとめ上げるのも自分の責務である」と考えます。後者のチームのほうが、圧倒的に生産性が高いことは当然です。

マッキンゼーにもプロジェクトマネージャーや担当パートナーは存在しますが、それはチーム管理上の役割です。冒頭の事例のように、新入社員であってもリーダーシップを発揮するよう、常に教育されているのです。

リーダーシップは特殊な能力ではなく、必要な教育や訓練を経ることで鍛えられ、身につけられます。そのために同社で呪文のように繰り返されるのが「バリューを出す」という言葉です。

「何らかの成果(付加価値)を生む」という意味なのですが、1年や1カ月といった単位ではなく、ひとつの会議などごく短い時間で「どんなバリューを出したか」が問われます。