そのときは驚きましたが、こうやって日常的なイベントなどあらゆる機会で、若手にフィードバックを与える社内風土があります。忘年会の企画でさえ、「まずは忘年会のビジョンを明確にせよ」と言われることがあるんです。リーダーたるもの、何をするにせよ、まずはビジョンを持てということなんでしょう(笑)。

また一般的な組織では、標準的な人を念頭に人事制度がつくられますが、そうなると、最も優秀な人の成長スピードが最大化できません。

一方、マッキンゼーでは能力があれば入社1年後でも翌年はマネージャーに昇格します。昇格には2年が必要と決まっていれば、この人は2年目には悠々と成果を挙げることができます。でも、すぐにマネージャーに昇格するので、2年目も新たなチャレンジを受けます。すべての人に成長への負荷をかけ続けることで、それぞれの可能性を最大限に引きだすのです。

成長するか、組織を出ていくかの「グロウ・オア・アウト(Grow or Out)」を採用する企業は多いけれど、昇格するか、組織を出ていくかの「アップ・オア・アウト(Up or Out)」をここまで徹底させる企業は多くありません。パートナーには向いてなくても、マネージャーやコンサルタントとしてなら優秀という人はたくさんいます。

しかしそういう人が、自分の力の範囲内でゆっくりと仕事をし始めると、突出してすごい人が生まれにくくなる。マッキンゼーは、優秀な人をさらに成長させるにはどんな仕組みが必要かと常に考えています。それが、わずか数百人の日本支社からも、多数の人材を輩出できる理由なのでしょう。

キャリア形成コンサルタント 伊賀泰代
一橋大学法学部を卒業後、日興證券引受本部(当時)を経て、カリフォルニア大学バークレー校でMBAを取得。1993年から2010年までマッキンゼーで採用マネージャーなどを務める。2011年に独立。著書に『採用基準』。
(鈴木 工=構成 二石友希=撮影)
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