カルビー マーケティング本部マーケティング企画部部長 松本知之

その伊藤の肝煎りで3年前に始まったのが、ブランド戦略見直しのプロジェクトである。カルビーにはポテトチップス、かっぱえびせん、じゃがりこ、Jagabee、フルグラなど事業の柱となる7つのブランドがあるが、それぞれを成長させていくには何が必要か、新商品はどういう方向で開発すべきかを自ら考えよというのが伊藤の出した宿題だった。

自立のためには、まずは自己像を知る必要がある。プロジェクトを担当した松本知之マーケティング企画部部長は、カルビーとは何者かを再定義するところからプロジェクトをスタートさせた。

「06年に、『掘りだそう、自然の力』というコーポレートメッセージを出しているのですが、今回のプロジェクトでやはりこの言葉に立ち返るべきだという結論に至ったのです」

スナック菓子は、「あまり体によくないもの」というイメージがつきまとう。しかし、カルビーの商品の本質は、素材に極力手を加えずに「自然の力を掘り出したもの」なのだ。それを再確認することで、進むべき道が見えたと松本は言う。

「主力のポテトチップスも、本来は自然な商品なのですが、スナック菓子全般に張り付いているイメージをなかなか払拭できずにいました。しかし10年にVegipsという、文字通り野菜を素揚げにした商品を売り出したことで、変わってきたのではないかと思うのです」

Vegipsのヒットはカルビーの商品全体のイメージを「自然の恵みになるべく手を加えずに仕上げた、大人が食べてもおいしいスナック」へ脱皮させる効果があると松本は見る。いわば、脱スナック菓子である。しかも、この方向性の先には大きな市場が開けている。

「なぜならVegipsの購買層の中心は、子供を持つ母親ではなく、40代、50代の女性たちだからです」

これまでカルビーがほとんどリーチしていなかった層である。つまりこの路線を推し進めることで、健康志向や大人の需要にもフックし始めているのだ。