入り口は“ヨーグルトの友”だが、アンケートを取ってみると主食として食べられているケースが圧倒的に多いという。やがてパン、米と並んで朝の主食の一角をフルグラが占める日がくるかもしれない。松本が言う。

「日本の人口が約1億2700万人。朝食を食べる人が1億人と見積もって、一番多いパンで45%、次がお米で35%ぐらい。残りの20%は野菜だけとか飲み物だけだと。じゃあ、朝食を食べる人の5%をフルグラのお客さんにしたらそれだけで500万人。500万人が毎日50グラムのフルグラを食べてくれたら、ざっと540億円になる。朝食はとてつもなく大きな市場なんです」

伊藤の言う自立の第一歩は、このフルグラの例が象徴するように、自らを縛っていたイメージから脱出することだったと言ってもいいかもしれない。そして松本は世界進出を積極的に推進して、ドメスティックな食品会社というイメージからの脱出を企図している。

「世界のスナック市場を約10兆円と考えると、そのわずか1割を取るだけで1兆円です。カルビーの実力をもってすれば、1兆円企業になるなんてどうということもありません」(松本氏)

伊藤も同じ考えである。

「公式には7年後に5000億円と言っていますが、食品でグローバルに勝負しようと思ったら、やはり1兆円ぐらいないと認知されないでしょう」

これだけの大風呂敷を広げられるのも、松本が言うように、カルビーには成長の余地がまだまだ眠っているからだろう。真面目に地道に商品を磨き上げ育て上げていくDNAと、それを黄金に換える錬金術の融合によって、カルビーは会社の宝を掘り出している。

(文中敬称略)

(伊藤千晴、牧田健太郎=撮影)
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