「どうやって?」ではなく、「何のため?」が重要

何か問題が発生したとき、従来は仮説検証法がよく活用されていた。仮説検証法は、現状の問題を「どうやって解決するか」というハウツーに主眼が置かれる。ただ、仮説によって問題が一発で解決されることは少ない。一般的には、仮説を立てて実行しては失敗し、それをフィードバックして新たに仮説を立て、といった作業を延々と繰り返すことになる。これはいわば闇の中に目隠しをして突っ込んでいくような行為だ。

それに対してファンクショナル・アプローチは、現状の問題からいったん離れて、「そもそもこのカタチは何のためにあるのか?」と考える。一見遠回りに見えるが、本来のファンクションに気づけば、理想のカタチへの到達も速い(図1)。

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図1 「仮説検証思考」と「ファンクショナル・アプローチ」の違い

別の角度からいうと、仮説検証法は「過去の再現化」、ファンクショナル・アプローチは「未来の具現化」のための手法だ。仮説検証法は、いま起きている現象を「結果」としてとらえて、その「原因」を探るところから思考がスタートする。原因らしきものが見つかれば、それを是正する方法を仮説として立て、それを実行する。このときの仮説はこれまでの事例や経験から導き出されるため、過去の固定観念に引きずられやすい。一方、ファンクショナル・アプローチでは、いま起きている現象を、何かの「目的」を達成するための「手段」として位置づける。目的はつねに未来に存在するため、それを達成する「手段」も創造的に変えやすく、未来志向だ。

いまAという問題が起きているとき、「何が原因でAが起きたのか」と過去を振り返るのか、それとも「そもそも何をしようとしてAを起こしたのか」と未来を向くのか。そこに大きな違いがあるといえる。

前置きが長くなったが、実際に福島の未来をファンクショナル・アプローチで分析していこう。