●案件1:社長秘書から内線

【山田君】会議室に飛んで行き、小村を別の部屋に移らせる。

【吉村君】取り急ぎ小村を別の部屋に移らせ、あとで小村から予約の時間をオーバーした理由を聞き、指導する。また設備予約システムの工夫による再発防止を検討し、システム部に頼んで重要度の高い予約の前後30分間はほかの予約が入れられないようにしてもらう。

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図2 問題解決のプロセス

山田君がよくないのは、「小村を移動させる」という表面的な解決に留まっていること。このままでは再び同じことが起きる可能性があります。一方吉村君は、図2の「問題解決のプロセス」のなかでも、「なぜこの問題が起きたのか」を考える仮説のプロセスをきちんと踏んだため、トラブルの裏にかくれた「真の問題」に気づきました。小村さんのせいばかりではなく、会議室の予約がギチギチに詰まっていたことも一因だったのです。この機会にそれを解決しておけば、同じトラブルはもう起きなくなるでしょう。

●案件2:小村の先輩社員からメール

【山田君】「書類を忘れるなんて、ダメじゃないか」と小村を叱る。

【吉村君】大事に至らなかったものの、大きなリスクが発生したことを重く見て、小村に原因究明と再発防止策を考えさせる。また前山がメールを送ってきたことにも着目し、前山自身が先輩として小村を指導するよう指示する。また今回の事件を小村1人の問題と捉えず、課の全員に重要書類の取り扱いに慎重になるよう徹底させる。

山田君のように「気をつけろ」と言うだけでは、原因究明ができていないので再発するおそれがある。その点、吉村君は問題を解決するだけでなく、トラブルさえも部下育成の機会にしています。そうすると部下が育っていくので、結局自分が楽になるというわけです。

●案件3:小村よりメモ

【山田君】自分で文具店に電話し、返品できないか聞いてみる。

【吉村君】金額的には大した損害ではないので、まず小村を落ち着かせたあと、返品が可能かどうか小村自身で文具店に確認するように指示する。もし返品ができないのであれば、別事業所に依頼して、ほかの備品と交換できないかを確認させ、後日その報告を受ける。

山田君のようにすべて自分でやってしまっては、部下は育ちませんし、自分が忙しくなる一方です。