非効率な職場では「不正」が起こる
「『息抜きのために私用でネットやメールを使うのは、使った社員が悪い』というのは誤り。もっと深い原因がある」。そう話すのはキヤノン電子社長・酒巻久氏だ。
PC導入以前は給湯室など社員のサボる場所は決まっていたが、ネットサーフィンが自席でできるようになり、一見しただけではサボっているか否かがわかりにくくなってしまった。
キヤノン電子では、PC操作をリアルタイムで監視するソフトを商用化した。このソフトで就業中にネットやメールで遊んでいる社員をあぶり出すことができる。
酒巻氏曰く、「調査すると、一般にPC利用時間の3割程度は私用で使われていることが多い」という。
特に経営層や管理職までがネットで遊んでいる会社は、業績が悪くなりがちだ、と酒巻氏は指摘。「銀行から出向してきた人など、職務があいまいな人ほど遊んでいる」(酒巻氏)。
問題は業務効率にとどまらない。たとえば情報漏洩の問題。三菱UFJ証券の元部長代理が148万人分の顧客情報を不正に持ち出したニュースは記憶に新しい。PCで遊んでいる時間が長い従業員は会社で重要な仕事を任されておらず、忠誠心が低いうえ、「不正」を働く時間的余裕もあるため、このような行為に手を染めやすい。
「個人情報以外に、アパレル会社のデザインや、メーカーの設計データなど『知的財産』も狙われる」(酒巻氏)というように、企業にとって生命線ともいうべき情報も流出している。外国人従業員が情報を引き出すケースも多いという。
しかし、ログの監視とその後の調査によって意外な事実も発見されている。それは「管理職の能力不足」である。