リース料率は実質金利より高い

100万円のコピー機を5年間リースすると、109,471円も損をしている!
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100万円のコピー機を5年間リースすると、109,471円も損をしている!

多くの職場においてリースは広く利用されている。ただ、ほとんどは惰性でそうしているだけで、メリットとデメリットを十分に認識しているところは少ないに違いない。せいぜい「多額の購入資金が不要で、固定資産税や保険料もリース会社が負担してくれるので面倒くさくない」といったところだろう。

とりわけリース利用が多いのがコピー機である。しかし、リースは購入に比べて、費用や税金面で本当に有利なのか……。そこで、価格100万円のコピー機を、リース期間5年(60カ月)で利用する場合と、購入し5年間で減価償却をすませる場合を比較してみたい。

まずはリースのケースを見よう。リース料率を1.9%とすると、機械設備価格の100万円×1.9%で、月額リース料は1万9000円。これを12倍した年間リース料は22万8000円だ。つまり、5年間の費用合計は114万円である。

だが、リース料率を実質金利と誤解してはいけない。ちなみに、リース料率1.9%を年利率に換算すると5.28%になる。決して安い金利とはいえない。つまりリース料とは、もともとのコピー機の価格に、リース会社のコストと利益が乗ったものなのだ。

では、購入したらどうか。5年で減価償却を行うわけだが、2007年4月から減価償却制度が変わり、損金算入できる減価償却の限度額が購入価格の100%に引き上げられた。従来は95%だったので、100万円のコピー機なら5万円多く経費として損金算入できるようになった。

具体的には、1年目は100万円の半分、その後も毎年半分ずつ償却して、5年間でほぼ100%償却できてしまう。これに固定資産税が約3万円かかり、借入金利がない場合は費用合計は103万円あまりとなる。リースより11万円ほど安い。

加えて重要なのが節税効果だ。購入だと早めの償却によって、節税効果も早めに享受できるのである。例えば、500万円の利益が出ている中小企業なら、法人税の実効税率が32%なので、1年目に減価償却費と固定資産税合わせて約51万円が費用計上でき、およそ16万円の節税となる。それだけ資金が効率的に運用できる。

負債計上の義務化でメリットが薄まる

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さらに、昨年4月1日から適用されている「新リース会計基準」がある。従来、リース取引は賃貸借処理が認められ、リース料は支払時点で経費処理できた。ところが、この改正で一定規模以上の企業については、リース資産とリース負債の貸借対照表への両建て計上が義務づけられ、経理処理が複雑になった。

ただし、その基準の適用対象は、(1)金融商品取引法が適用される上場会社ならびにその子会社・関連会社、(2)資本金5億円以上または負債総額200億円以上の未上場会社である。一般の中小企業には、新基準の採用は強制されず、引き続き賃貸借処理も認められる。

リース利用に際して経営者に留意してもらいたいのは、リース契約は会社からすれば、借金をしているのと同じということだ。危ういことに中小企業の社長たちは、おおむねこの感覚に乏しい。

だから万一、倒産でもしようものなら、銀行等からの借り入れに加えて、リース会社への未払残高がリース債務として残ってしまう。その意味でも私は、自己資金に余裕があればコピー機についてはリース契約より購入を勧める。

(岡村繁雄=構成 坂本道浩=撮影)