また別の店舗で、コーヒーを試験的に100円から140円に値上げしました。1週間後、店長に聞くと「客数がものすごく減りました」と暗い表情です。しかも実験はあと2週間続くと言います。私は本部の担当者に「実験は終わったぞ」と言いました。理屈で考える人は、「3週間のテストは3週間やらないと」と考える。商売の現場感覚と、かけ離れてしまうわけです。
間違いは誰にでもあります。一生懸命に考えて、精一杯チャレンジして、その結果としての失敗は、むしろウエルカム。そういう人は、指導していくことで、いくらでもよくなります。
逆に、何の問題も起こさないような人のほうが、問題なのです。つまりチャレンジをしていない。もしかすると、やるべきことさえやらずに、サボっているのかもしれない。そういう人は、徹底的に責めて、許しません。
新しいことにチャレンジすれば、失敗するのは当たり前です。大切なのは、そのときに上司が適切にフォローすること。管理職の仕事は、部下を管理することではありません。部下の成長を支援することです。評価を下すのではなく、コーチングをするのです。
「部下に優しくしろ」と言っているのではありません。教育とは、お仕着せのトレーニングを受けさせるようなものではなく、経験のないような厳しいチャレンジをさせることです。そうして若い人を伸ばしていくことが、企業の成長につながります。企業の成長のドライバーとは、「お金」ではなく、「人」なのです。
このため私はできるだけ若い人と接点を持つように心掛けています。どんなポテンシャルを持つ人間がいるか、いつも探しています。
よくマネジメントが勘違いすることがあります。
あるポストに空きがある。50歳と30歳の2人の候補がいる。現時点で比較すれば、50歳のほうが能力はやや高い。だから安定感のあるベテランをそのポストにつける――。