業績悪化が続いたマクドナルドはいかにして奇跡のV字回復を実現させたのか。高千穂大学の永井竜之介准教授は「2015年を底として、マクドナルドは奇跡的なV字回復を果たしていく。その背景には、マクドナルドを『信頼してくれるファン』を増やすための、きめ細やかなマーケティング戦略があった」という――。

老若男女に愛されるマクドナルド

日本マクドナルドは、いまや、トップクラスに好感度が高く、子供や若者だけでなくファミリー層や中高年層も、安心してお得に便利に利用できる「信頼できるブランド」としてファンを拡大し、さらなる成長を遂げている。

マクロミル ブランドデータバンクが2021年1月に実施した「よく利用するカフェ・ファストフード店」の調査によれば、5年前の調査では男女ともに1位はスターバックスだったところ、マクドナルドが男女いずれもスコアを2倍以上に大幅上昇させて1位に躍り出た。また、CM総合研究所の「2022年11月前期調査 作品別CM好感度ランキング」では、マクドナルド「三角チョコパイ」が総合1位に輝き、トップ10のうち、じつに4つがマクドナルドのCMという圧倒的な支持を集めた。

宙に浮いた表彰台のイラストの1位を指さす手
写真=iStock.com/takasuu
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業績悪化からの奇跡的なV字回復

しかし、わずか10年前、マクドナルドは信頼とは程遠いイメージで、売り上げを低迷させて苦しんでいた。ここでは、日本マクドナルドの奇跡的なV字回復について、「信頼してくれるファン作り」という視点から見ていこう。

1948年にアメリカ・カリフォルニアでマクドナルド兄弟の始めたマクドナルドが、日本に進出したのは1971年、東京の銀座三越にオープンした銀座店だった。そこから日本全国に約3000店舗を展開するまでに拡大したが、現在までの道のりは平たんではなかった。

1990年代後半から2000年代前半にかけて、最も安い時にはハンバーガーを50円台で販売するほどの安売りによってブランドイメージを低下させた。また、2010年代前半には原材料の賞味期限切れ問題や異物混入騒動が立て続けに発生し、ブランドイメージと業績を大幅に悪化させて、2014年から2年連続の赤字を経験してしまった。

しかし、2015年を底として、そこからマクドナルドは奇跡的なV字回復を果たしていく。その背景には、信頼を回復し、マクドナルドを「信頼してくれるファン」を増やすための、きめ細やかなマーケティング戦略があった。

まず、それまでの効率性や話題性に偏重していた方針を改めた。安易な安売り、店頭のメニュー表廃止、60秒以内に商品提供できなければ無料券配布キャンペーンなど、提供商品やサービスの水準を低下させて「安かろう悪かろう」のイメージを招いていた方針をやめて、安心と品質を最優先する方針へ舵を切った。