ドイツ、バイエルン州の州都ミュンヘン。バイエルン州の産業大臣は、世界各地で活発な産業の呼び込みを続けている。(AFLO=写真)

日本の場合、自治体同士で限られたパイ(予算)の分捕り合いをすることはあっても、成長戦略や経済政策で競い合うことはない。仮に競争があったとしても、中央からもらった予算内での競争だから発展がない。自分たちで徴税し、使い道を考え、いい結果を出さなければならない競争とは次元が違う。

今回のドイツ研修旅行に参加した経営者のほぼ全員が、日本の統治機構を抜本的に改めない限り、ドイツの州のようなエネルギーは地方から自発的に出てこないと強く感じたようだ。

特にバイエルン州などは印象的で、州政府は「たとえドイツに何があっても自分たちだけは生き残る」というゴーイング・コンサーンの姿勢が明確だった。

彼らの視線は首都ベルリンを飛び越えて、EUの本部があるベルギーのブリュッセルに向いている。交渉相手はブリュッセルであり、ドイツ政府は邪魔者という発想なのだ。

オーストリアや東欧・ロシアとの国境に近いため、自分たちで独自の「外交」を行っていて、外交の責任者は「フォーリン・ミニスター」(外務大臣)と呼ばれている。州のトップは「プレジデント」(大統領)で、財務大臣や産業大臣などの大臣も州ごとに存在する。

バイエルン州の産業大臣には明確な任務が2つある。1つはバイエルンに世界中から産業を呼び込んで、いい雇用をつくること。もう1つはバイエルン州の企業の世界化の手助けだ。

彼らは、日本にも州事務所を構えている。これまでに100社程度の企業の日本進出を手がけ、日本からは約200社の進出を手伝ったそうで、日本とバイエルン州の交易額は年間7000億円に達するという。

そんな自治体は日本にはない。ほとんどの都道府県はニューヨークやロサンゼルス、ロンドンクラスの所には県事務所を持っているが、やっているのは地元から来た県会議員をアテンドするくらいで、現地の企業を地元に積極的に誘致するなど産業政策の先兵として活躍している姿など見たことがない。