世界基準での本当に優秀な人とは
もちろん、そうである。10年目では心配である。でも、そうであれば、質問を変えよう。あなたの企業では、10年目までに社運をかける仕事をある程度安心して任せられるように人を育てていますか?
現在、タレントマネジメントの議論が盛んである。一般的には優秀層に特化した育成だと理解されている。実際、優秀層の選抜型育成には多くの企業が取り組んでいる。
でも、残念ながら、多くは30代前半ぐらいで選抜して、そこから始めて45歳ぐらいで事業部長クラスをつくり上げるような状況であろう。優秀な若手を選んで、30代前半までの育成スピードを上げて、人材確保に取り組んでいるという話はあまり聞かない。多くの企業で、初期の育成は事業部門や現場の育成に任されている。
これも海外が必ず素晴らしいというわけではないが、私が見聞きする海外優良企業のタレントマネジメントでは、10年目ぐらいまでの優秀層に、意図的にいくつかのかなり大きな仕事をやらせ、そこまでに社運をかけるような仕事を任せることができるように育てる。
また、こういうことをすれば、対象の若者も高い働きがいを感じ、大きく早く伸びるだろう。本田選手がほかに誰もいない、という使命感を持って3回目のキックに臨んだときのように度胸も備わってくるかもしれない。任せるということは人材育成だけではなく、モチベーションや度胸の観点からも重要である。
もちろんリスクはある。仕事を任せて人を育てるという行為は、リスクをともなう行為である。任せてみて、ダメな場合もある。しばしばそのことを恐れて任せることをしなくなる。でも、本来考えるべきは、顕在化したリスクにどう対処するのか。また顕在化しないためにどこまでサポートできるのか、ということである。リスクテークなしの人材育成はありえないという言い方もできる。
若手期の育て方の変革を考えるべき時期にきていると思う。10年目ぐらいまでが勝負であるJリーグでも、ジュニアユースなどがあり、優秀な若手をかなり早期から育てる仕組みがあると聞く。
第2が、評価基準の世界化と他流試合である。例えば、あなたの企業で高い評価の人材は、世界的に見て優秀だろうか。現在、残念ながら、日本企業の人事評価基準は、国内基準、いや社内基準である。社内で優秀な人が、認められ上に上っていく。海外では、ほかの企業で認められる人に引き抜きがかかり、それを防ぐために、彼ら・彼女らを上に上げていく。優秀な人はほかの企業で使える人である。
当然ほかの国や企業の評価基準を使うことが必ずしも望ましいわけではないだろう。重要なのは、自分の企業の人材がほかの企業でも優秀な人材かということである。逆説的に聞こえるかもしれないが、他社から引き抜きのかかる人材を育てる企業がよい企業なのかもしれない。評価基準を世界化すれば、人材はグローバルな評価基準に基づいて自分を磨く。