顧客を次々と拡大させた情報開発と環境開発

JINS PCに限らず同社では需要拡大のために積極的にコラボレーションを実施してきた。田中社長の「ある意味でメガネがメディアのようになるときもある」という革新的な思考に基づき、有名キャラクターとのコラボレーションを積極的に進めているのだ。これまでアニメの「ワンピース」「エヴァンゲリオン」、そして「ウルトラマン」といった大人気キャラクターとのコラボ・モデルを開発してきた。

JINS PC に関しては、13年7月19日から「宝生家執事 影山モデル」を発売している。これは同年8月3日に封切られた映画「謎解きはディナーのあとで」とタイアップしたモデルで、テレビCMも製作されている。


アニメ「ワンピース」のJINS PCオリジナル・モデル。(c)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

その他、13年8月10日からは、アニメ「ワンピース」のオリジナル・モデルの発売を行っている。「ワンピース」は言わずと知れた超人気アニメであり、コミックスも日本での発行部数が累計で約2億9000万部にも及ぶ強力コンテンツである。以前にもワンピースとのコラボを行い、その際には累計で30万本ほど売れたそうだが、シリーズ第4弾となる今回のコラボでは初めてJINS PCのオリジナル・モデルが開発されている。池川氏は、「ワンピースの場合、コアのファンだけでなく、何となく好きという人もたくさんいて、まさに広がりがすごいのです。 JINS PCも今買うか、買わないか迷っている人が多いと思いますので、このタイミングで欲しいけれどきっかけがないという人々に最後のひと押しをしようと考えています」と戦略意図を語る。

プロモーション活動を積み重ねていく道程で大きなビジネスチャンスの拡大が2つあったという。1つは、組織の一括導入である。日本マイクロソフト、ヤフージャパンなどのIT系企業が、業務効率改善のため、組織としてJINS PCを導入したいと申し出てくれたそうである。また、12年5月にパソコンやゲーム機の使用機会の増えた子供たちの目を守るために開発された「JINS PC for kids」が、東京都杉並区立和田小学校に導入され、(社)日本PTA全国協議会の推薦商品になっている。これはアイウエアの分野では、日本初の快挙であるという。さらに、12年11月から、京都府立医科大学附属病院・放射線科でJINS PCが活用されている。これは、CT、MRI、エックス線などの画像診断にあたり高輝度モニターを使用し続ける医師たちの眼精疲労の軽減を目的とするものだ。大手IT企業や教育機関、医療機関でのJINSPCの採用は、この商品の高い機能性を裏付けているといえる。

いま1つは、販売網の拡大であった。かつてJINS PCは、直営店でしか取り扱っていなかった。それが眼科医で扱ってもらえるようになり、最近では家電量販店にも陳列されている。12年10月から家電量販店最大手のヤマダ電機の都市型店舗「LABI」で販売が始まった。また、ヨドバシカメラでは、旗艦店の「マルチメディアAkiba」で同年9月から先行販売を開始し、11月からはそれ以外の店舗やオンライン・サイトで販売し始めている。このような販売網の拡大を同社は、「環境開発」と呼んでいる。

これまで視力矯正のツールと考えられてきたメガネを「誰にでもかけてもらえるもの」と発想し、柔軟性の高い組織で独創的な商品を開発し続けるジェイアイエヌ。「情報開発」と「環境開発」に励む同社には、今後さらなる成長が約束されているように思う。

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