AKB48から「自己紹介」を学ぶ

ももいろクローバーZ マネージャー 
川上アキラさん

昨年、グループの悲願だった紅白歌合戦への出場を果たした「ももいろクローバーZ(ももクロ)」。歌手別の視聴率は40.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と前半戦のヤマ場をつくった。ももクロはなぜ人気なのか。理由の1つは「物語づくりの上手さ」にある。

結成は2008年。芸能事務所スターダストプロモーションのなかで、女優やモデルを志望する10代前半の少女たちの育成を任されていた川上アキラが、「彼女たちが人前に出る機会をつくろう」とレッスンの一環として結成したグループだった。

事務所としても、過去に本格的なアイドルグループを運営した経験はなく、すべては手探りだった。結成から1年ほどはメンバーも目まぐるしく入れ替わった。

アイドルグループとは何をすればいいのか。ほかのグループの公演に足を運んで理解を深めるなかで、川上は、「AKB48のように定型の自己紹介をつくろう」と考えた。

AKB48にはメンバー1人ずつにキャッチフレーズと自己紹介が用意されている。ライブではファンと掛け合いながら、リズミカルにキャラクターを説明していく。個性を印象づけるにはもってこいだ。

インディーズでのCD発売を終え、メンバーも固まっていた。川上は、それぞれの性格やプロフィールをホワイトボードに書き出し、「おまえたちを覚えてもらうには、どんなフレーズがいいか考えろ」とメンバーたちに問いかけた。

この結果、リーダーの百田夏菜子は静岡県出身のため「茶畑のシンデレラ」、童顔の玉井詩織は「みんなの妹」、最も身長が低い有安杏果は「小さな巨人」などと、それぞれのキャッチフレーズが決まっていった。メンバーごとにイメージカラーを割り当てたのもこのときだ。百田は「リーダーだから赤」などと、キャラ設定に合わせて色が当てはめられた。

いまやグループは飛ぶ鳥を落とす勢いだが、こうした運営の手法は現在でも変わらない。川上は「学園祭の延長みたいな感じです」という。

「数万人規模のライブの演出も、3~4人での打ち合わせで決めていますね。上司への報告や社内での稟議などはほぼなく、現場に一任です。個人経営者の集まりみたいな社風なんですよ。他の社員が何をやっているのかは、僕もよく知りません」