「7万人ライブ」は3年越しの企画

昨年の紅白歌合戦でも、唐突な演出にファンが物語を読み込むという「好循環」が生まれている。ももクロはインディーズデビューのときには6人組だった。ところが11年4月に早見あかりが脱退し、5人組として再出発している。そこで紅白で、5人の胸元にカラータイマーが取り付けられ、曲の途中で白色から青色に光が変化するという演出があった。ファンたちは早見のイメージカラーが青色だったことから、悲願を果たせなかった早見へのメッセージだと解釈し、盛り上がった。だが演出の意図は「青い地球」で、早見は関係なかった。川上は「ももクロはファンに育ててもらったグループ。本当にありがたい」と振り返る。

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「ももクロ」誕生の軌跡

今年の元日、ももクロは「次の目標」を発表した。7万人を収容可能な国立競技場でのライブを目指すという。単独公演としてはスマップ、ドリカム、嵐、ラルク・アン・シエルの4組しか前例がない。ももクロが初の単独ホール公演を行ったのは10年12月、客数は約1200人だった。以来、「なるべく身の丈に合わない目標を立ててきた」と川上がいうように、西武ドームや横浜アリーナなどの大舞台に挑む姿勢が、成長の物語を駆動してきた。幾多の挑戦は場当たり的にみえるが、実は「国立ライブ」を示す手書きメモが3年前に書かれている。川上はいう。

「3年前、国立競技場で行われた嵐さんの7万人ライブの様子をDVDでみました。メンバーたちは『いつかこんなライブがやりたい』と興奮を隠さなかった。当時はそんなライブは夢のまた夢でしたけど、ステージ構成などをメモに書いて話し合ったことがありました」

他愛のないメモ。それは少人数のスタッフとメンバーの間で「行き先」を共有することでもあった。近い将来、夢は現実になるだろう。その物語がさらなるファンを呼ぶ。

(文中敬称略)

ももいろクローバーZ マネージャー 川上アキラ
1974年生まれ。大学卒業後、スターダストプロモーション入社。結成当初からももクロのマネジメントを担当。口癖は「おまえ馬鹿なのか!?」
(佐藤 類=撮影)
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