ただ、多く払っていたからといって、勝手に法定の最低割増率に変更することはできない。
「労働条件の変更には労使の合意が必要です。勝手に変えれば、不利益変更で訴えられる可能性もある」(同)
2つ目の時間単価はどうか。時間単価は「月給÷月の平均所定労働時間」で決まる。時間単価を抑えたければ分子を減らすか、分母を増やすしかない。月給を下げるのは困難なので、見直せる可能性があるとしたら所定労働時間のほうだろう。
じつは月の平均所定労働時間は最大で174時間にできる。法定労働時間1週40時間を考慮すると、年間の休日は最低でも104日必要。365日から104日を引いて12カ月で割ると21.75日。1日8時間労働とすると、8時間×21.75日で、月174時間だ。
ただ、通常はそこに祝日や正月休、夏休みなどが加わるため、月の所定労働時間がもっと短くなる。時間単価を抑えるには、祝日などを減らして、月の所定労働時間を174時間に近づけていく必要がある。
もちろん祝日や夏休みをなしにすると、社員からは反発を食らうだろう。和田氏が提案するのは、特別休暇の導入だ。
「休暇とは、本来は出勤日だが労働を免除される日のこと。祝日や年末年始、お盆を休日ではなく特別休暇にすれば、社員はいままでと同じく休める一方、計算上は出勤日になるので月の所定労働時間が増え、残業代計算のもとになる時間単価を抑えられます」
交渉しだいだが、やってみる価値ありだ。