ビジネスマンは、休日をつぶしてでも出勤せざるをえない場合がある。休日出勤の場合は、代わりに別の出勤日を休日として設定するわけだが、これには「振替休日(振休)」と「代休」という2種類の手続きがある。両者は法律上、明確に区別されているのだが、その違いをご存じだろうか。
会社経営者向けのセミナーを多数主宰し、講師としても活動する社会保険労務士、北村庄吾氏は、以下のように説明する。
「『振休』は、休日と勤務日とを変更して入れ替えること。この場合、休日自体が変更されるため、働くべき日に働き、休むべき日に休んでいることになり、賃金の割り増しは生じない。一方、『代休』は、休日は変更せず、本来休むべき休日に働き、別の勤務日に休むこと。この場合は休日労働の割増賃金が発生する」
つまり、同じように休日出勤した場合でも、振休の扱いになれば賃金の割り増しはなく、会社側にはメリットがあるが、代休の扱いとなった場合、休日出勤の賃金割り増しが適用されるぶん、労働者にはメリットがあるのだ。
以上の「振休」と「代休」の違いですら、意識している人は少ないだろう。しかし、さらなる盲点ともいえるのは、本来割増賃金が発生しない「振休」であっても、運用によっては、割増賃金が発生するということだ。
「現在、土曜と日曜の週休2日制を採用する会社が多いが、労働法上の1週間は、何も取り決めがなければ、日曜から起算して土曜までとなる。この場合、もし、振休を適用して休日と勤務日を入れ替え、土曜に出勤し、その前の月曜を振休とした場合は、割り増しが発生しない。しかし、次週の月曜を振休とすれば、割り増しが発生してしまう」(北村氏)
休日出勤日と振休日の位置関係いかんによって、割増賃金の発生の有無が決定づけられる不思議。この原因は、労働基準法の規定の中にある。