ただ、都知事の猪瀬さんは、やるんでしょうね。都民に選ばれてトップに立っている以上、彼の声が都民の総意であるというのが民主主義です。やる以上は、是非もありません。五輪反対派の意見にも耳を傾け、その主張の中で本当に障害になりそうな要素をどう取り除き、すぐに潰える経済効果だけでなく、長く東京で暮らしていく人たちのメリットに繋げていくのかを考えなければなりません。
もちろん、五輪招致には短期的な経済効果はあります。期待ができるのは主に2点です。ひとつはテレビを中心とした家電の買い換え需要。もうひとつは「観戦ツアー」による外国人観光客の訪日です。
これは直接にオリンピック期間中の需要を増やすというだけでなく、東京に来た人がついでに箱根や軽井沢など東京近郊のリゾート地、あるいは奈良や京都、北海道といった観光地を訪れることも考えられます。政府は2030年までに訪日外国人数を年間3000万人とする目標を掲げています。昨年の訪日外国人数は837万人で目標にはかなり遠いわけですが、五輪招致は目標達成への足がかりになるかもしれません。外国人観光客には、日本の真の姿に触れて、何度でも再訪してもらえるような仕組みが必要になります。
それは、日本という文化やソフトウェアをどのように磨くのかという話でもあります。あまり知られていませんが、日本に来る外国人観光客の動機の1位は、実は「日本食」を堪能すること(※1)。世界で大ブームを巻き起こしている寿司の本場であり、牛丼にラーメンやカレーといった大衆食から、刺身、懐石、しゃぶしゃぶといった日本ならではの健康食は、非常に高く評価されています。今後、検討が進むといわれる「カジノ法案」も含めて、オリンピックを契機に、安全で快適で楽しい観光地・日本というイメージを作っていくにはどうすれば良いのか、ということでもあります。