そこには、治安を担う警視庁をはじめ、JR・地下鉄や空港などの輸送機関、道路整備事業、清掃事業、電気、水道、ガスといったインフラに医療施設など、都民の生活を充足させることが第一です。猪瀬さんは「首都高には10万件近い補修必要箇所がある」とか7年後のオリンピック招致でインフラ投資の必要性を説いていましたが、そもそも副知事に就任されたのは6年半前の2007年じゃないですか。それまでいったい何をしていたんだという話になりませんかね。

正直、64年の東京五輪は世界に「成長する東京」をアピールしましたが、20年の東京五輪は「衰退する東京」の墓標として振り返られないことを祈るのみです。それは、「五輪後」に東京の抱える本当の難題をどう着地させるのかでありましょう。大きいイベントをやって解決する問題じゃないでしょ、独居老人の孤独死や、増大する地域の社会保障、それを支えるインフラの老朽化って。晴海で五輪をやって、町田や調布や福生や青梅や三鷹など都下の生活環境改善に追加予算は回ってこないですよね。盛大に宴会をやってお客様を歓待した後にゴミを始末するのは東京都民の手と財布だということを忘れずに、未来を見据えた「オリンピックとは何か」をいまからでも真剣に考えて欲しいところであります。

その意味では、前回の2016年招致より少ない予算ながら、国内世論の反発も少なく、官民一体となった招致活動が実現できているようにも思います。オリンピックで景気高揚といった下世話な神風祈願だけではなく、トヨタのような老舗企業から楽天に代表される新興企業まで、かなり幅広く招致に参画しているのも印象的です。盟友とも言われるテレビ局関係者のほか、五輪招致や湾岸再開発に理解を示す有力者の努力の賜物と言えましょう。その点では、前知事の石原慎太郎さんから上手く事業を引き継いだ猪瀬直樹さんの手腕とも言えるのかもしれません。

開催地発表まで泣いても笑っても後1週間足らず。都民としては「特別税増税は特等席チケット代の強制徴収だ」というぐらいの気持ちで生暖かく見守りたいと思います。とりあえず、東京に当選したら猪瀬さんのはしゃぎっぷりを堪能したいです。

※1:観光庁「訪日外国人の消費動向」(2012)によると、今回実施した活動は「日本食を食べること」(95.0%)、「ショッピング」(76.8%)の順で、次回実施したいことは「日本食を食べること」(49.5%)、「温泉入浴」(47.3%)の順だった。
※2:東京都の招致委員会がIOCに提出した「立候補ファイル」によると、メーンスタジアムは1300億円をかけて建て替えを進めている新宿区の国立競技場。選手村は中央区晴海地区に新設。東京圏の33競技会場のうち28会場(85%)を半径8km圏内に配置する計画となっている。

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